ラピスラズリの泪 004 「……良いんですか?あの様な態度を取らせて」 沈黙を破った景吾は、彼女達が去った方を見る。 普段の理事長なら、生徒や来客にあのような態度に出られたら、激怒する筈。 それなのに、怒声すら出さないのは、理事長を良く知る景吾には不可思議である。 「仕方ないだろう。姫君を招き入れたい学園は、数多にある。その中で我が氷帝を選んだ。姫君の多少の我が儘は聞かなくては、な」 大人の駆け引きを垣間見た瞬間だった。 [姉は扱い易いだろうが、妹は一筋縄では行かねぇな] 理事長にも臆せず、凛とした態度を崩さないその様は、前に居た学園内でも役職持ちだったに違いない。 常に冷静を保つなど、そう簡単に出来る筈もなかった。 [ん?……姫君?] 理事長がこぼした言葉が、引っかかる。 イギリスには、同じ年の王女は居ない筈。 揶揄したのか、それとも、嫌味を込めた言葉なのか。 まだ、成長過程にある景吾には判らなかった。 「彼女達は、来週の月曜から登校する。制服はまだ間に合わないから、暫くは以前の学校の制服での登校となる。風紀にはそう伝えなさい」 「判りました。では失礼します」 パタム、とドアを閉めると、景吾は小さく溜息を吐いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |