蒼月の光
002
「いらっしゃい、いらっしゃい、今日はシリスが安いよ!!」
屋台の呼び込みの声。
屋台には、瑞々しい果物が並んでいる。
果実の島の市は賑やかだ。
色とりどりな果実を手にとっては、味見と称してかぶりつく。
すると、エースは足を止める。
「どうしたよぃ?」
マルコは足を止めたエースの視線を追った。
すると、その先に居たのは、蒼い髪の女であった。
「お、イイ女……ってエース?」
スタスタ、と、脇目も振らずに歩き始め、ひっそりと佇む屋台の前で足を止めた。
屋台に居た女が顔を上げると、視線が絡む。
『えと…いらっしゃい?』
「………」
透き通る様な声。
そして、海の深海を思い出させる様なディープブルーの瞳にエースは何も云えなかった。
『お客さん?』
きょとんとした表情に、ハッ、と我に返る。
「あの、えー……、一個、試食しても良い?」
かろうじて出た言葉がそれだった。
[もっと他に言葉ねェのかよ!!]
自身で突っ込む。
すると、女は一つの果実を手渡してくる。
『これ、売り物にならないから…』
少し形が歪な果実だけれど、味は同じだ、とそう云う。
エースは、パク、とその果実に噛みつく。
女は不安そうに見つめてくる。
その表情を見た瞬間、エースは一言、こう云った。
「もう一個ある?」
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