蒼月の光 003 ザザ……ン 優しい波が、少女の躰を撫でる。 少女はピクリ、と、反応を示す。 『う……』 瞼を震わせ、目覚める。 少女は、ムクリ、と起きあがると、キョロ、と辺りを見回す。 『死ねなかったのか……』 散々、人の生命を奪ってきたのに、自分の生命は奪えなかったのか。 少女は、自嘲気味に笑った。 『これも、運命(サダメ)なのか……』 ゆっくりと、少女は立ち上がる。 そして、痛む躰を引きずる様にしながら歩き出す。 ここで、生きろ そう云う事なのか? 少女は、そう考えながら歩く。 もしそうならば、両親が好きだった果実を植えて、育てて行こう。 何時か、自分の首を狩る死神の鎌が振り下ろされるまで。 それまでは、ここで暮らそう。 少女は、小さく笑った。 [*前へ] [戻る] |