Wonderful days 義兄心、妹知らず 夕食も終わり、テレビ番組を楽しみ始めた頃。 学生組は、ダイニングテーブルで今日の課題と復習、予習。 大人組は、ソファーでくつろいでいた。 「んーと、それはね…」 対面に座っていた筈が、何時の間にやら隣同士に座り直し、教え合いをしている。 その様子を微笑ましく見ている義兄2人。 「見て、雪斗。ああやってると、双子の兄妹みたいだ」 「恋人同士にも見えるがな」 雪斗の思わぬ言葉に、海音は黙っていた。 「国光が奏汰を嫁にしてくれたら、俺は安心なんだけど?」 「国光君にも選ぶ権利、あるんだよ?」 睨み合う2人。 海音にしてみれば、国光に奏汰の人生を背負わせるにはいかない、と思っているが、雪斗は逆に、奏汰の全てを知っているからこそ、国光に嫁入りさせたいのだ。 「兄貴は国光の何が気に入らないんだよ?」 「気に入る、入らないの問題じゃない。奏汰は、国光君離れをしないと――……」 「単に甘えてるだけだって。奏汰にとって、国光は特別な存在なんだし」 「けど――…」 「それに、血の繋がり、はないんだし」 そう。 奏汰は父親の親友の忘れ形見なのだ。 施設に入れられる筈だった奏汰は、寸での所で、うちの両親に引き取られ、今に至る。 だからこそ、海音は父親がわり、として、奏汰の幸せを案じていた。 「ま、俺達がとやかく云った所で、本人達にその気がなけりゃあ、無意味だわな」 雪斗の言葉に同意を示す。 2人が教え合いをしている方を見つめていると、不意に奏汰と目が合う。 「兄上も、混ざる?」 こてり、と小首を傾げる。 2人は首を左右に振る。 「ふぅん」 興味なさげに呟くと、再び、教科書に視線を戻した。 「あの眼差し…」 「あん?」 「奏汰は時折、冷たい眼差しをするんだよ」 「奏汰は興味がないと、冷たいだろ」 「だけど……」 「過保護」 「雪斗。お前だけには云われたくないな」 苦笑いを浮かべ、雪斗を見る。 「俺は溺愛してるだけ。過保護じゃねぇな」 「同じだよ」 「違ぇ」 バチバチ、と火花が散る。 一触即発の空気が漂う中、 「喧嘩するなら、今すぐ出てけ」 奏汰の言葉に、ピタリ、と大人組が動きを止めた。 「奏汰。その氷水は何?」 「兄上達にかける」 ニコニコ、と笑いながら、氷水が入ったバケツを見せる。 「かけても良い?」 「「遠慮します」」 「かける」 ス、と行動に移そうとした時。 「奏汰、こっちに来い」 「ん」 国光の言葉に、奏汰は素直に従う。 [[助かった]] 内心、安堵の言葉を呟く。 「兄貴の云った依存の意味、判った」 「だろう」 兄2人は盛大な溜息を吐いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |