Wonderful days 出来ないんだよ 「ねぇ奏汰、兄上はお腹が空いたんだけど…」 「ハチミツくんは?」 国光を見上げ、尋ねる。 無言で頷く。 「ん、判った」 居心地が良かった腕の中からするり、と抜け出すと、キッチンに向かった。 そんな奏汰を見送る2人。 今しか、海音に頼む事が出来ない、と判断した国光は、閉ざしていた口を開いた。 「海音さん」 「何だい?」 「奏汰を青学(ウチ)に来させる事は出来ませんか?」 物事に懸命になり過ぎて、肝心な物を忘れたり、何時間も迷子になっているにも関わらず、本人にその自覚が無い、と云う事が多い奏汰。 何度、迎えに行った事だろう。 もし、奏汰が青学に来たのなら、側に居る事が出来るので、迷子になる事も無く、忘れ物も無くなる。 しかし、海音は頷く事はなかった。 「それは出来ない」 「どうしてですか?」 「…奏汰が自立出来なくなる」 「………」 「君が生涯、奏汰の側に居る訳じゃないんだよ?あの娘も…好い加減、国光君離れしないとね」 奏汰は、下らない事柄でも迷ったら、必ず、と云って良い程、国光に連絡する。 それが癖になっているのか、迷えば即連絡してしまう。 それを続ければ、奏汰は一生、国光から離れられなくなってしまう。 それを杞憂しての対策であった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |