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足踏み
1ー6

「さっきからぼーっとしてるね」

声の方向に顔を向ける。さっきマキちゃんと話しをしていた男子が話しかけてくれていた。

「名前何てゆーの?俺は青山孝司」
「森岡ことりです。よろしくお願いします」

青山さんは黒髪のミディアムヘアで、一重だけどクリッとした目をした人だ。何より大柄な体格が特徴的だと思う。青山さんはにこっと笑い、テーブルの上のお菓子に手を出しながら「緊張してる?」と聞いてきた。

「はい。こういうの初めてなので」
「そうなんだ。初っぽいなぁ。そういう子って俺、タイプだよ」

正直何て返せば良いのか分からず、私は曖昧な返事をした。

「ことりちゃんって呼んでいい?俺も呼び捨てで良いから」
「あ、はい・・・」

・・・どうしよう。こういうタイプの人は初めてだから対応に困ってしまう。フレンドリーに接してくれるのは助かるけど。

「男子とあんまり話さないタイプ?」
「あ、はい。いつも女子の友達といるので」
「じゃあ、今日俺とたくさん話しをしてお互いを知れたらメアド交換しよ」
「え、いえあの・・・」

一体何がきっかけでメアド交換という事になったのか。別に嫌な訳ではない。友人が増えるんだし断る理由もない、はずなのに頭にちらちらとゆうさんの顔が浮かんで戸惑ってしまう。何でだろう。とにかく他の男の人とは不用意にメアド交換してはいけない気がする。ふと気付くと蓮さんが部屋に戻ってきて、他の人と間をあけて座っていた。

「・・・マキちゃんは蓮さんが好きなんですね。知りませんでした」

何となく今の空気が嫌で、青山さんに別の話題をふってみる。

「蓮は他校からも人気だからね。ちなみにことりちゃんは好きな人いるの?」

話題が戻ってきてしまった。

「・・・好きな人ですか?」
「そ。気になる人とかいる?今ここにいるとか?」

急に言われても困る。好きな人?高校2年、16歳。今まで付き合った事がなければ、恋バナの主役になる様な華やかな思い出もない。それに日頃マキちゃん達に「キモ」とか「ブサイク」とか言われてるから、そんな自分が誰かの恋愛対象になれるのかすら疑問だ。でも、自分が一方的にでも好きと思う相手。それはさっきから脳裏に浮かぶ人。自分の中ですごく大きな存在ではあるけど、はっきり言ってそれが恋として好きなのかはよく分からない。・・・というか直接会って間もないのに恋愛として考えるのが怖いのかもしれない。

「あ、えっと・・・」
「うん。誰々?」

青山さんが何故か期待を込めた目でこちらを見ている。失礼だけど、その目に嫌悪感を覚えて、その視線を振りほどく様に私は口を開いた。

「歳上の人なんですけど」
「・・・へぇ、同じ学校の人?」
「いえ、大学生です」
「どこで出会ったの?」
「あ、いやネットのチャットで知り合って・・・」

この前みたいに思いを口に出してみたら分かる事があるかも、そう思って話してみる。だけど『ネット』と言った途端青山さんは思いっきり呆れた様な顔をした。

「ことりちゃん、はっきり言ってネットとかやめといた方が良いよ。顔は見えないし、嘘もつき放題だしさ。危険じゃん」

「・・・確かにそうですけど、でも、そんな人達だけじゃないです。とても優しい人です」
「それは騙そうとしてるんだって。ことりちゃん男への免疫がないから危ないよ。ネットなんて遊びでしょ。その気持ちも勘違いなんじゃない?」
「・・・」
「ネットなんかやめてさ、現実で恋しようよ。俺もいるしさ」

青山さんが諭す様に言う。すると突然私の背中に何かが伸しかかった。

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