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足踏み
1ー5

ゆうさんと会って約1日が経って、夢見心地状態も落ち着いて、いつもの自分に戻ってきた。今日の放課後は特に何もない。帰ろう、そう思って教室を出ようとしー・・・

「ちょ、ことり。今日暇?」

マキちゃんとナチちゃんに呼び止められた。

「?うん。暇だよ?」
「暇ならカラオケ行こうよ。ね!」

マキちゃんが私の腕を掴みながらそう言う。マキちゃんの隣りにいたナチちゃんがからかう様に続ける。

「えー、ことりはお子ちゃまだからなぁ。まだ早ぇよ」
「でもさぁ〜女子1人足りないしさぁ。ね、いてくれるだけで良いの!」
「まぁ、笑取りくらいはできそうだしな。来るだろ?コンパ」
「コンパ!?」
「ぶっちゃけ合コン?あはは」

ナチちゃんの言葉に思わず大声を出してしまった。そういえば最近マキちゃんがそんな話しをしていたな、と思い出す。でもまだ私には早いと思う。合コンなんて。

「いっ、いいよ。私合コンなんて行けないよ」
「お願い!!女子が1人足りないのぉ〜」
「それにマキや他の女子がお持ち帰りされそうになったら、誰が止めんだよぉ〜」

泣きついてくるマキちゃんに、ケラケラ笑うナチちゃん。もうごちゃごちゃだ。その後も続いた半強制的な誘いに私は頷くしかなかった。



「じゃあカンパ〜イ!!」

ついつい流されて来てしまった。私はカラオケ店内の団体客が使うであろう、それなりに大きな部屋にいる。乾杯の合図に皆一斉に注文していた食べ物や飲み物に手を出す。まずは軽く食べたり、会話をするのか歌う人は1人もいない。この光景ドラマとかで見るなぁ・・・。室内には私、マキちゃん、ナチちゃん、を含めた女子5人。そして男子5人。女子は全員同じ学校でそれなりに交流があったので少し安心した。でも男子は私の通う学校から比較的近い所にある綾葉高校の男子らしく、見知った顔が1つもない。

「ちゃんと蓮君連れて来てくれたんだぁ!」
「あったりまえ。約束だったからなぁ。でもすっげぇ苦労したんだぜ?」

私を挟んでマキちゃんと男子が小声で会話を始める。真ん中でどうしたら良いか分からず、ちょっと俯いて話しを聞かせてもらう。

「あいつ普段誰とも絡まねぇからさ。今日も半強制的に連れて来た」
「え、一匹狼タイプ〜?かっこいい〜ますますタイプ〜」
「あー、やめとけ。あいつしょっちゅう女子から告白されてるけど、全部断ってるから。お前も無理だから」
「ちょっと〜?ひどくなぁ〜い?」

2人が笑い合ってる真ん中から、部屋の中を見渡す。話しの主役の“蓮”さんはどの人だろう?

「ね、ことり。蓮君かっこいいよねぇ〜」
「どの人?」
「ほら、あの金髪の〜」

興奮気味なマキちゃんが私だけにわかる様に、こそっとある男子に向けて指を指した。その男子は今、機嫌が悪いのか眉間にシワを寄せている。何より目立つのは白に近い金のハイトーンカラーの髪の毛。ゆうさんよりフワフワしてそうな髪型。そしてその髪が映える女子より白そうな肌。猫の様な気怠げな、でも凛とした印象をもつ顔立ちの、個性的なかっこよさをもつ人だ。

「本当だ。かっこいいね」
「でしょ〜?今日は頑張ろっ!」

そう言うとマキちゃんは席を立ち、蓮さんの隣りに移動した。マキちゃんの気配に蓮さんがマキちゃんの方を向くと、とびきりの笑顔でマキちゃんが「隣りい〜い?」と話しかける。と言うかもう座ってるけど。マキちゃんが間髪入れずに自己紹介を始める。蓮さんは横目にマキちゃんを見ていたけど、急にふっと笑ってマキちゃんの髪を撫でて、一言何が言った後何事もなかったかの様に席を立つ。

「あぁ〜、おいっ。帰るなよ」
「・・・外の空気吸ってくるだけ。ほっといてくれない?」

私の隣りのさっきマキちゃんと話しをしていた男子が、部屋から出て行こうとする蓮さんを慌てて引き止める。が、蓮さんは怠そうに突っぱねて部屋を後にする。その直後マキちゃんの周りがわっと沸き立った。「さっき何されたの?」とか「何て言われたの?」とか。多分さっき蓮さんがマキちゃんの髪を撫でた事だろうな、と私も遠巻きに考える。確かにさっきのはすごかった。気怠げで艶っぽい笑顔。あんなの至近距離で見て、しかも髪を撫でられたマキちゃんは大丈夫だろうか。私なら免疫がなくて倒れてしまいそうだ。でも盛り上がる皆と対照的に、マキちゃんは硬直して動かない。皆は「マキが蓮君の悩殺にやられたー!!」とまたはやしたてている。でもマキちゃんはそんな感じじゃない。一体何があったんだろう?


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あきゅろす。
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