足踏み 4ー5 「この前はチケットありがとうございました。行ってきましたよ」 少し前にライブのチケットをもらっていた事を思い出して、もう一度お礼を言う。 「いいよ、余り物だし。どうだった?」 「ステキでした!あんまり音楽に詳しくないですけど、上手だなって思いました。歌声もすごく綺麗でした」 良さの伝え方、褒め方が分からず、答えに困る。凄いと感じるものの、音がどうとか声がどうとか専門的な事を伝えるのが結構難しい。 「あと、歌詞が好きです。思わず聞き入ってしまう感じが」 「そう・・・」 蓮さんは優しく笑いながら聞いてくれていた。ありありと分かる訳ではないけど嬉しそうに見える。 「知り合いがそのバンドやってるんだ」 「へぇ、凄い!そういうのって楽しそうですね」 蓮さんが自分の事を話してくれている事に嬉しさを感じる。 「・・・よかったら今週の土曜日ライブ行ってあげて。俺の学校の文化祭でするらしいから」 蓮さんはそう言ってカバンから紙を取り出して、私にそれを渡した。紙はライブの案内が書いてあって場所や時間の記述とともに、過去のライブの一場面と思われる写真が載っている。 「うわぁ、ありがとうございます!」 歌がまた聞けるのも嬉しいが、蓮さんに誘ってもらえたのも理由の一つ。まぁ、蓮さんはただ知り合いのバンドの観客が増えれば、くらいだろうけど。でも今日話して、それっきりは少し寂しかった。だから次がある事に胸が踊る。 「絶対に行きますね」 笑顔で返すと、蓮さんはまた優しく笑った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |