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足踏み
3ー4
立ち寄ったコンビニから出ると、雨が降っていた。慌ててカバンの中から折りたたみ傘を取り出す。雨の中の移動って結構大変。もう一踏ん張り、と自分に言い聞かせながら足を進める。家に帰るのが少し遅くなるけど、今からユートピアに向かう。

「・・・」

1人歩きながら、まだお店に居るか聞いてなかったことを思い出す。大切なことを聞いていないなんて・・・と自分に呆れる。居てくれるといいなぁ。ふと耳に騒音が入る。どうやらゲームセンターのある通りまで来ていたらしい。ここら辺は見た目が派手で怖い人が多くて苦手だけど、今日は雨が降っていたから近道目的で使うことにした。うっかりぼーっとしていたけど、この通りは少し早足で行こう。そう思って顔を上げると数メートル先の建物の屋根下に蓮さんがいた。服が濡れたのか、裾を掴んで軽くパタパタと扇いでいる。同じく濡れているであろう髪が顔を隠していて、蓮さんがとても弱々しく見えた。だからなのか

「蓮さん、大丈夫ですか?」

思わず声をかけていた。もう赤の他人でもないはずだし。蓮さんは私の存在に気付き、曖昧に笑って見せた。よかった、少し湿る程度みたいだ。

「急に降ってきたから・・・困っちゃうよね。雨って」

ふぅ、と溜息をつく蓮さんは初めて見た時と同じ様に綺麗だったけど、やっぱりどこか弱々しかった。

「そうだ!濡れてますよね。何か拭く物・・・」

うっかりしていたけど、蓮さんの体が濡れていたことを思い出し、自分のカバンを漁る。そんな私を蓮さんは不思議そうに眺めていた。

「これ、使ってください」

今日みたいな日のために持ち歩いていたフェイスタオルを蓮さんに渡す。少し戸惑ったような手つきで受け取った蓮さんはビックリした様にタオルを見つめていた。

「ありがとう。・・・でも使っていいの?俺男だし」
「はい、使ってください。このままじゃ風邪引いちゃいますよ?」

初めて会った時のつんけんした態度とは違う、あどけなさを覚える表情や仕草の蓮さん。この前といい、今といい本当はこっちが本当の蓮さんなのかな!と内心思う。弱々しくたずねてくる蓮さんに促すと遠慮がちにだけど髪を拭き始めた。

「失礼します」

その間にと、私もポケットに入れていたハンカチで蓮さんのシャツを拭く。シャツにハンカチが触れた時、一瞬蓮さんが動きを止めた。早く拭いた方がいいと思っての行動だったけど、気を悪くしたかな。それからは出来るだけ蓮さんが気にならない様心がけて拭いた。



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