足踏み
2ー9
私はこの前の合コンのメンバーと一緒に、ある店に来ている。前々から行きたかった店。やっぱり情報通りいい雰囲気。ゴハンも美味しかったし、店員もイケメンだし。上手くいけばココには蓮君と来るハズだったけど。何か冷たい人だったし。顔はいいのになぁ。でも今はそんなことより、店員よりもっと 興味のあるものがある。
「なぁ、マキ。アレが本当にことりちゃんといた奴?」
「そーそー。付き合ってんのかなぁ?」
隣に座っている青山が訝しげに聞いてくる。私だけじゃなく、今の皆の注目は今日ことりと一緒にいた男の人にある。顔立ちは中性的で整っている。さっきから店の隅のテーブルの片付けを店員と一緒にしているけど、学校で見た時同様の爽やかな笑顔をうかべている。
「ことりの彼氏ねぇ・・・そんなにかっこ良くなくね?」
「ねー。知らなかったぁ。私は顔、そこまで嫌いじゃないよぉ?」
内心結構タイプだし。チビじゃないし、デブじゃないし。優しくて何でも言う事聞きそう。ナチもああ言ってるけど、多分ことりへの反発も入ってる。
「まー、危ない奴かもしれないし観察しとくか」
「ことりのために私達が見定めてやるぅ?」
あはは、と笑いながらまた皆で男の人を見やる。カウンターとテーブルを何度か往復していた彼は、今はカウンターで座りながら店員と楽しそうに話していた。すると、そのついでの様な自然な仕草でこちらににこりと笑いかけて
「一々話す声がでけーな、お前らって」
となんとも可愛らしい顔に似合わない事を静かに言ってのけた。
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