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足踏み
2ー3

「ここだよ」

ゆうさんと私の視線の先には地下に続く階段があった。そこから視線を上に、上にと移動させていく。外装は全身真っ黒でシンプルなイメージ。地下を含めた4階建てで、地上の階も何かのお店のようだ。

「上は1階がシルバーアクセ、2階がヘアサロン、3階は地下の店の倉庫なんだって」

建物を見上げる私に、ゆうさんも同じように建物を見上げながら答えてくれた。

「店員とか男だけで、ちょっとこわいかもしれないけど、良い所なんだ」

優しく笑いながらゆうさんが慣れた足取りで階段を降りて行く。私もゆうさんの背中を追いかける。重そうなドアの横にある看板には「カフェ・レスト・バー ユートピア」とあった。カフェ・レスト・バー・・・。お茶もお酒も飲めて、ご飯も食べれる所なのかな?なんて考えていたらドアを開けて待っていてくれた。慌てて店内に入り、店内を見渡す。店内も一面黒い壁で覆われていて慣れない雰囲気に少し恐縮してしまう。

「翔梧〜。お疲れ様」
「お、佑。いらっしゃい」

ゆうさんは店内をまっすぐ進み、カウンターキッチンにいる男性に声をかけた。その男性もゆうさんを見た瞬間ゆうさんににかっと笑いかけた。雰囲気からして親しい仲らしい。

「ん?佑、そっちの子は?」
「この子はことりちゃん。俺のお友達。ことりちゃん、俺の高校の頃からの友達の翔梧」

こちらを見て男性ー・・・翔梧さんがさっき同様にかっと笑いかけてくれた。翔梧さんは大柄な人で身長はきっと180はあるだろう。黒いギャルソン特有の格好がよく似合う人だ。短髪のアッシュグレーの髪と体格からこわそうな感じがするけど、笑顔が人懐こそうで安心感を感じる人だ。

「ことりちゃん初めまして」
「は、初めまして。ことりです」

慌てて頭を下げる。よく周りを見たら、ここにいる翔梧さん以外の人も私を見ていた。何度か周りの人にも頭を下げる。顔を上げると、翔梧さんも周りの人達も笑顔で応えてくれた。

「とりあえず、あっちの席で座って待ってて。すぐ行くから」

ゆうさんにそう言われて、お店の隅にあるこれもまた黒色のコーナーソファーに座る。ここからゆうさんが翔梧さん達と話しているのが見える。親しい仲だけで話したい事もあるだろうな、そう思った瞬間ついさっき見たナチちゃん達の目を思い出した。この前のことがあって、私は2人とは必要以上に関わらないと自分で決めたのに。後悔はしていないはずなのに、気がつけば2人の視線を気にしている。弱いなぁ、自分。モヤモヤする。


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