カップの中身がこぼれないようにとドミが森先生からそれを取り上げると、森先生は柵に両腕を置いて顔をうずめる。

 コーヒーの匂いがする。

 どうやらコーヒーが気管に入ってしまいそうになりむせたらしい。

 ドミは大げさに笑いながら「大丈夫?」と声をかけるけど、森先生のせき込んだのがどうやらツボらしくてドミもまたせき込んでしまいそうなくらい笑い声を上げる。

 職員室のなかから「どうしたの?」と言う声が聞こえて、あたしはその女の先生に「森先生がむせちゃって」と短く答えた。

 その先生はあはは、と綺麗に笑って職員室から出て行った。



「森先生大丈夫?」

「……はい……」



 息が荒いもののむせたのが少し治まったらしい。

 森先生は「すみません」と言ってドミからカップを受け取った。



「初めて見たもので……」



 深呼吸を1つして先生はむせた原因らしきことを恥ずかしそうに言った。

 当然何のことか分からなくて、ドミもあたしも「は?」と同じような顔をすると先生はあたしを直視する。



「おさげ、初めて見ました」



 そう言って耳の下あたりから下へと手を動かして、何かを表す手振りをした。

 ドミは分かったような顔をして頷き、「髪型ね」と付け加えた。



「お前いつも髪の毛縛らないから、いつもと雰囲気違うように見えたんだな」

「あ、髪の毛伸びてきたんですよね。それに試験だったから髪が邪魔になって集中できなくなるの嫌だなって思って今日は2つに縛ったんですよ」



 森先生の手のしぐさの表すものが髪型だったのかと納得し、あたしは自分の髪に触れる。

 目線を移すと枝毛を見つけてしまった。

(*)backgo(#)

木春菊

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!