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食堂は思いのほか混んでいなかった。
#5
たぶん、近づいてきた文化祭のことで休み時間にもクラスメイトたちは作業をするようになっていたから、昼休みにも話し合いとか作業の続きをするために教室に残ってご飯を食べているんだろう。
他のクラスも同様に。
といっても文化祭でうちのクラスはドーナツを売る予定で、仕入先のお店との話も順調に進んでいたから、正直言って作業といっても内装をどうにかするだけで。
楽といえば楽で。
だからあたしが出る幕でもないわけだ。
去年はもうちょっとやる気があってあたしも作業に参加していたような気がする。
ホラー映画を真似た洞窟みたいのをみんなで作って、けっこう遅い時間まで教室で作業していた。
みんなが頑張った甲斐あって、当日たくさんの人を楽しませたってことで文化祭の表彰式では全クラスのなか2位になった。
それなのに今は何だか腰が重くて、ご飯を食べ終わってもあたしは食堂の隅っこの席にいた。
お茶のペットボトルを手で弄びながら放課後のことをどうしようかなと考えながら。
その日、通学鞄だけを持って家を出たのはただの偶然だった。
意図していたわけじゃなく、それを忘れたと気づいたのは学校に着いたときだったんだ。
だからと言って、忘れちゃったと肩を落とすこともなかったから、どうせなら部活を休むという選択肢を自分に与えてみようかなと。
昨日から体の調子が可笑しいんだよって言ったら彩子に通じるかな。
大丈夫?って言ってくれるのかな。
しんみり考えてみたけれど、頭を振って弱々しい考えを振り落とした。
go(#)
木春菊
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