1
その日は委員会の仕事で朝早く登校することになっていた。
昇降口のところに立たされて、朝からやる気のない生徒たち相手に挨拶を強要される、だるい仕事。
隣のクラスの彩子はバスがちょうどいいのがないから、たぶんあと10分くらいで来るだろうという時間に、あたしは教室に1番乗りしていた。
#2
他に誰もいない教室に、あたし1人だけなのがちょっと新鮮で、窓を開けたり黒板をきれいに消し直したりと普段は日直がやる仕事をやっていた。
黒板消しを戻して、教卓に両手をつく。
ドミはいつもこんなふうに教室を見渡しているのかと、ドミの気持ちを味わいながらあたしの席を見やる。
あたしの前の席はガタイのいい男子生徒がいるから、その後ろで内職をしてても見つかりっこないだろうと思っていたあたしは、「え」と声を漏らす。
「意外と丸見えじゃん」
ドミだともう少し背が高いだろうから、2、3歩横にずれればあたしの手元なんかばればれだ。
だから授業中によく指されるのか、と納得してこれからは気をつけようと思った。
そろそろいい時間になるかなというころ、廊下で足音がした。
初めは彩子が来たかと思ったけれど、彩子にしては足音が重たそうに響いている。
気の速い男子がもう登校してきたのかと思って廊下に視線を向けたとき。
「おはよう、ございます……」
その足音の人物は教室の出入り口の淵に立ち止まり、姿勢を正した。
昨日の今日だし、あたしは昨日のことがフラッシュバックして、森先生の挨拶に反応することができなかった。
go(#)
木春菊
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