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いい加減前を向いてほしくて素直な感想を述べれば、
「アンタってキレーな顔してンなぁ〜」
感嘆の声が返ってきた。
「はぁ?」
まるで関係のないことを言われ、一瞬、思考が停止した。
「整ってンなぁ〜って思って」
「…嬉しくない。いいから前向け」
「前向いたらアンタの顔見れねェーじゃん」
「見なくていい!」
「やだー。にひひっ」
「はぁ…」
結局、何を言っても奴は言うことを聞かず、俺はいつも以上に授業に集中できなかった。この上なくやりにくかった。それに、只でさえ休憩時間は視線を感じるのに今日はコイツが居る所為で何割りか増している。
「名前、教えろよ」
「………」
本当に、お前は学校に何をしに来てるんだと誰か怒鳴ってやってほしい。生憎、俺はそれを実行する気力が勿体ないのでやらないが。
気を紛らわそうと読んでいた本に目を戻そうとすると奴は何か思いついたように言い出した。
「あー…はいはい、わかったよ。俺はァ滝内恢(カイ)。ほら、ちゃんと名乗ったんだから教えろよー」
――そうじゃないってーの…。
「(はぁ…。)…葉山」
「名字じゃん!」
「知りたいなら先生にでも聞け」
「っンだよ…じゃあいいや」
仕方なく名字だけを教えてやれば、案の定奴は面倒くさがって名前を聞こうとはしなかった。
「どうしてお前はまだ居るんだ…!」
「家まで行こうかと」
せっかく欝陶しい視線&雰囲気から解放されると思ったら、コイツだけは宣言通り何処までも付きまとって来やがった。
「来るな」
「いィーじゃねーかよォー!!アンタに拒否権なしっ」
「それはお前だ!お前が家に来る権利はない!」
「ある。オレ“すとーかー”だから。にひひっ」
――あぁ、もう疲れる…。何なんだよ一体。
「あのさぁ、」
もー我慢できねぇ。ノートに落書きしてくるわ、トイレには着いてくるわ、挙げ句の果てには体育のサッカーで何をする訳でもないのにチームに無理矢理入ってきてただずっと俺を観察してくるわで…我慢の限界が来ていた。
「お前のその格好だと余計目立ってかなり迷惑してるワケ!着いてくるなら優等生の中の優等生になってからにしやがれ!!」
言い放つと同時に思いっきり力を込めて奴の肩を押してやった。その後、俺は明らかに怒っている雰囲気を漂わせながら大股で歩いて帰った。
なんで奴は今日付きまとって来たんだろう。今まで朝だけだったのに。もしかして俺が無視し続けたから、逆に興味を持たれたとか?いや、でもいきなりなのには変わりないよな。
「う〜ん…。やっぱわかんねぇ…」
帰り道、ひたすら考えを巡らせるが分からないものは分からない。最終的にどうでもいいやと考えることを投げ出した自分は、実はアイツと同じくらい面倒くさがりなんじゃないかと気付いて、落ち込んだ。
「よォー」
「………」
「ひひっ!ちょー驚いてるっ!変わったっしょ?オレ」
こんな笑い方をする奴、というかそもそも話し掛けてくる奴なんて一人しか居ないんだから、分からないわけはないんだけれども。いやしかし、これは―――
「変わりすぎだろ!!」
「いぇーい。イメチェン〜にひひっ」
話し方は相変わらずだ。けど、格好が違いすぎる。そんなに外国人になりたいのか!と思わずツッコミたくなるくらい(俺だけかな…?)キンキンだった髪は、みごと黒一色に染め直されていた。
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