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第二の非常食

「肉、肉食いたい」
「俺、女がいい」
「両方ほしい」

なんて船員たちの声が広がり始めていた。
前回、島にやっとついたというのにただの廃墟に過ぎなかった。
船員全員が島を最後にしたのはきっと二月ほど前だろう。
シトラスは面白そうに微笑を浮かべていた。

「お前は魚ばっかり食っててなんでそんなに平気なんだよ」

「僕は腹が満たされればそれでいんですよ」

エースが肉〜とうめきながらシトラスによっかかりながら言った。
食糧庫がとうとう底をつき魚ばかりの生活もすでに二週間。
コックたちも毎日色々と試行錯誤しながら魚を料理しているが、やはり元は魚。
ナースのお姉さま方もさすがに飽きてきている。

「仕方ないですね」

シトラスは本当に仕方なさそうにため息まじりに立ち上がった。

「マルコは人間だぞ」

エースが一応言っておいた。

「それぐらいわかってますよ」

ニッコリと微笑むシトラスに船員も興味を示し始めた。
事の一部始終を見ていたマルコもシトラスが自分のところに来るのではと身構えていたがそれは杞憂だった。
シトラスはマルコの横を通り過ぎると、厨房で今夜のメニューを考えていたサッチを呼んだ。

「一体何を用意するんだよい?」

いよいよ訳が分からなくなってきたマルコは尋ねた。
シトラスは長い刀を抜きながら微笑んでいった。

「だから魚以外のものを用意するんですよ。パンですけどいいですか?」

船員たちは魚以外ならなんでもいいとでもいうように頭を縦に何度も振った。

「俺様に何のようだよ」

シトラスに呼び出されたサッチも首をかしげながらやってきた。
シトラスはサッチを手招きし、サッチも手招きされるがまま刀を手に持つ彼の元へ向かった。

「それで俺を斬るなよ」

刀を持っていることに気づいてサッチは立ち止まった。

「そんな人間を食べるほど皆飢えていませんよ。少し手伝って欲しいんですよ。サッチにしか出来ないことなので」

「能力者でもないサッチにかい?」とマルコ。

「はい、サッチにしかできないんです」

「俺様にしかできないなら張り切っちゃうよ」

少しご機嫌になったサッチは足早にシトラスのもとに駆け寄った。
シトラスはサッチが目の前に来るとそのサッチご自慢のリーゼントを思い切り掴んだ。
サッチもマルコもエースも船員も驚いた。

「シトラス!?一体何やってんだよ」

サッチが首を動かそうとしたが、刀を当てられた。

「大人しくしてください。怪我、したくないでしょ?」

「いやいや、そんなのしたくないけどさ何やるつもり?」

サッチから尋常じゃない冷や汗が流れる。

「何って収穫」

なんでもないようにシトラスは言った。

「でもなんでサッチなわけ?」

末っ子エースが尋ね、シトラスが答えようとしたが、すかさずマルコがエースの耳をふさいだ。

「何すんだよ!マルコ。何も聞こえないだろ!?」

「おめぇは聞くなよい、変なこと吹き込まれて巻き込まれるこっちの身になれよい」

「あの、シトラスさん?いい加減なにするか教えていただけませんか?」

ついに泣きそうな声で敬語まで使ったサッチ。
理由はシトラスがあまりにも真剣にリーゼントを斬りおとそうとしているせいだ。
サッチはマルコに目で助けを求めたが、マルコもエースを押さえ込むのに必死だ。
エースはマルコの手を離そうと必死。

「何ってサッチのこの長い頭はフランスパンでできているから皆に食べさせようと思いまして」

「お前、それ本気で言ってるの?」

「僕はいつだって本気ですよ」

「ふざけんなぁぁぁぁぁああああ!!!!!」

サッチは懇親の一撃でシトラスの手から逃れると食堂から逃げ出した。

「待て、フランスパン!!!!」

シトラスは体を風に変えてサッチを追いかけた。
しんと静まり返る食堂。
マルコも呆気に取られてしまった。

「どうしたんだよ」

何もしらないエースはマルコに尋ねた。

「あいつも、魚に飽きてたんだよい」


逃げるフランスパン


その後、シトラスは一晩中サッチを追いかけ続けたという。






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