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The White Rose Of Virginity(完)
10

執務室にはやはりロイヤルがいた。彼は予想通りというように笑った。
ジューダスはボロボロの服を全て脱ぎ捨てた。ロイヤルは丁寧に体中の血を取りはじめた。


「随分力を使われたようで」


ジューダスは左手を握り締め開いた。


「ああ、契約も進んだ」


そこで執務室のドアが開いた。
カインだ。
カインは裸のジューダスを見て顔を赤らめた。


「おまっ!……………本当に女なのかよ」


顔を反らした。ジューダスは短く肯定した。
ルークがいつかは言うことは予想していた。重要なことは話さないということも予想していた。


「イノセンスはどうしたんだ?」


ロイヤルは拭き終わり、服を肩から着せた。


「殺した、あいつの力は限界にきていたから殺すことは簡単だった」


「力って?」


「“モノ”のことだ」


カインはなんとなく感づいていたので驚きはなかった。
ジューダスは淡々と続けた。


「私の力も“モノ”だ。あいつは自分すらも実験に使っていたんだ。」


沈黙が流れた。


「私の意味はリコードだ。」


リコードとカインは小さな声で繰り返した。
リコード=記録

記録、一体なにの?


「それはお前自身が知っている」

まるで心を詠んだかのようにジューダスは言った。
カインは自分の意味について考えた。まだわからない意味。
イノセンスは知っていると言っていた。おそらくジューダスも知っている。

ジューダスは執務室を出た。


「待てよ!」


カインがそれに気づき呼び止めようとしたのはドアが閉まる直前だった。
そして地面にある真新しい血を見て複雑そうに顔を歪めた。








「話ってなに?」


騎士団の指令室にカインは来ていた。ハジとスイは既にジューダスが帰ってきたことは知っている。
スイは眠そうにハジの背中にもたれ掛かっている。


「ジューダスとロイヤルの契約についてだ」


カインはジューダスの異変に気づいていた。
二人は少し興味があるのかカインをみた。


「まだ俺の仮説だけど一応、二人には伝えておこうと思って」


「確証はないのに話すのかしら?」とスイが言った。


カインは頷いた。


「仮説だったけど今日確信をもった」


ハジは目だけカインに向けた。


「ジューダスは元々イノセンスのせいで“モノ”だった、ジューダスはおそらく幼い頃になにかがきっかけでイノセンスに反逆した。なにかっていうのはわからない。そしてイノセンスを殺すには力が足りなくてロイヤルと契約したんだ」


ここで質問があるかと思い話を止めてみたが、ないので続けた。


「ロイヤルはきっと人間じゃない、エリス戦争でなんらかの形で生き残った魔導士って考えるのが妥当だな。ジューダスはロイヤルに力を求める代償に人間の全てをやった」


人間の全て、とスイは小さく繰り返した。

ハジが質問しようとしてカインは手を上げた。全部話し終わるまで聞くなという意味だ。


「ジューダスはもうロイヤルとの契約で触覚、食欲、睡眠、疲労を忘れている」


俺の仮説が正しれば、とカインは付け加えた。スイは静かにこめかみを叩いた。

カインは忘れているという表現を使った。
失ったではなく忘れている。それは戻ることもあるという意味なのかスイは考えた。


「さつきルークが言っていた、陛下に時間はない。悲劇が先かそれともってね、それはまさかと思うが」


「ジューダス自身だよ」


仮説通りいけば、と付け足した。悲劇はなにかはわからない。でもジューダスは無へと向かっている。
満月は対象的に輝いていた。








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