The White Rose Of Virginity(完)
6
起き上がるといつもと同じ変わらない朝だった。
あの子は子供というより自分と変わらないぐらいの十分な大人だった。
『私たちは特別なのよ』
特別、記憶は自我をもてない。でも俺たちは特別だから記憶の中でも自由に物を考えられる。
寝ている間なら話しかけられる(これはカインの仮定)
「どう特別なんだよ」
小さく呟いた。
やっと見つけたあの人、でも向こうはもう俺に接触してる。
一体どこで会った。
あの独特な雰囲気、あれぐらいしか頼りがない。
カインはこれまでの3年間で関わった人物を振り返った。
「あっ」
一人だけ思い当たる奴がいる。あそこまで表情が豊かではないというよりまったくない、そのうえあんな口調ではない。
「ジューダス……」
あの心の中が読めない雰囲気、殺気をだせば首元にナイフを突きつけられているような感じ、どこか謎めいた自身のことは一切話さないところ。
すべてあたるのはジューダスだ。
しばらくしてカインは思い切り苦笑いを浮かべた。
「ないないない!!!待て、あいつは男だ、あの子は女、性別が違うだろ!!!!ちゃんと考えろ、俺!」
「何一人で騒いでいる」
突然声がしてカインは飛び上がった。
入り口にジューダスが立っていた。
「い、いつからいるんだよ!」
「最初からだ」
急に恥ずかしくなってきた。また一人で騒いでいると質のよい服を投げられた。
「今からこれを着ろ、今からプレイト村へ向かう、今のお前は国の人間だ、私の顔に泥を塗るなよ」
「なんであそこに行くんだよ」
ぶっきらぼうにカインは尋ねた。
「ロイヤルにお前の部屋を調べさせたら隠し部屋があった、鍵がかかっているらしくお前がいないと開かないみたいだからな、さっさと用意しろ」
大きいため息が部屋に漏れた。
もちろんカインだ。
そして仕方なく着替えた。
カインは長くも短くもない黒髪を整えていた。
今回は二人だけで馬に乗っていった。
プレイト村はいつもと変わらない日々であった。
子供たちは外を走り回り、女は家事や機織、男は畑仕事や動物の世話。
「懐かしいな…」
小さくカインは呟いた。
「カイン!?」
村を入ってすぐに飲み友達のラルーがカインに気づいた。
「よぉ、ラルー、久しぶりじゃねぇか」
「お前なぁ、2ヶ月も何してたんだよ、こんな高そうな服着やがって出世すんじゃねぇよ」
「世間話はそこまでだ、さっさと動け時間がないんだ」
二人が懐かしがっているところに口が挟まれた。
「へ、陛下!?」
ラルーが叫んで他の村人が気づいた。
好奇の目が再び集まった。
「なんか面倒なことになる前に行くか、ジューダス」
孤児院にはいるとやはりセシルは驚いていた。
その証拠に洗っていた皿を割ってしまった。
「ただいま、セシル」
「邪魔する、ミスジュビ」
「い、いえ」
カインの部屋は一階にあり簡素な作りだった。
窓が一つ、家具はベッドと机、それとタンスそれだけだった。
ベッドをずらすと何もなかった。
しかし足でドンドンと踏み鳴らすと一部だけ空音がした。
その部分の床をはずすと階段が出てきた。
下りていくと扉があった。
手にもったランプでジューダスは扉をかざした。
「ロイヤルもここまではこれたがこの扉には鍵穴がない、どうせ魔術かなんかだろう」
「まぁ魔術に似せた“モノ”の力だけどな」
カインが手のひらを扉にあててなにか言うと音をたてて勝手に扉が開いた。
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