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The White Rose Of Virginity(完)
1

テントに戻るとそこは半壊状態であった。
奥へすすむと王の予想通りであった。
ハジは刀をもって気絶したスイに馬乗りになりスイの長槍が少し遠くの地面に深々と刺さっていた。
ハジは王の帰還に気づくと急いで立ち上がった。


「陛下!申し訳ありません、スイが例の破壊衝動を起こして止めようとしたのですが、力不足でした」


それにジューダスは首をよこにふった。


「かまわない、よく一人で止めた。見た感じけが人はいない、けが人がいなければそれでいい、それよりもどこか空きのテントにこいつを案内してやってやれ。名前はカイン・アディスアベバ、新入りだ。スイの世話はロイヤルにさせる」


ハジはもう一度深く礼をするとカインを連れて行った。


「なぁ、スイの破壊衝動って?」


鎧を音をたてながらさっさと歩いていくハジにカインは尋ねた。テントは所々使い物になっていないものがある。


「スイは俺の双子の妹で一緒に陛下に拾われた、拾われたその日からスイと二人で、陛下に絶対的忠誠をちかった」


それが話と関係あるのかよ。


「スイは陛下をお慕いするあまりに陛下が悪いことを言われたりしているのを、目にしたり耳にいれたりすると、怒りが爆発してとにかく目の前にあるものにあたるんだ。今日みたいにな。村ではなんとか理性を保っていたが、ここに戻った瞬間あのでかい槍を振り回し始めたんだよ」


淡々と説明するハジにカインは苦笑いするしかなかった。

「ここが君のテントだ、明日、日の出とともに出発する。しっかりと休んでおいてくれ」

そしてハジは騎士団へようこそとつけ加えた。








次の日、きっかりと日の出とともにに出発した。
そのおかげで昼前には城下街に着いた。カインは城下街に着いてからずっとキョロキョロしていた。


「城下街に来たことはないのですか?」


スイは尋ねた。


「いや人探し、金髪に青い瞳の女、しってるか?」


ふむと顎に手をのせてスイは考えた。


「さあ?知りませんね」


残念そうにカインはふいた。それにスイはクスッと笑った。


「恋人ですか?」


カインは少し驚き苦笑を浮かべた。


「違うな、名前も知らないんだ。ただ昔ある約束をした仲なんだ、向こうが覚えているかわかんねぇけどな」


「大切なお方なのですね」


スイは幸せそうに微笑んだ。


「スイの大切な人は?」


カインの問いにスイは満面の笑みで


「もちろん陛下とハジです!」
とこたえた。










夜中、部屋を与えられたカインは中々寝付けられず、長い城の廊下を歩いていた。絨毯が敷き詰められ装飾も華やかである。
だが、汚れかたなどからかなり昔のもののようだ。
真っ暗な廊下にただひとつ明かりの漏れる部屋があった。好奇心が駆られたカインはドアに耳を寄せた。


「正気なのですか?」


声とな内容からハジとジューダスのようだ。


「私はいつも正気だ、これは決定事項だ」

「カイン・アディスアベバは暗殺者なのですよ、ケルゲレンの息子である、ケルビンが黙っているはずがありません、それに陛下が命を狙われる危険性が」


ハジも事情知ってるのか。
俺って信用ねぇな、まぁ仕方ないか…


「ケルビン様には既に亡くなっていたとでも言えばよいではありませんか、陛下の命は今まで通り私が守ります」


この声、ロイヤルか。


「ロイヤル、お前が四六時中陛下の側にいられるわけがないだろう」


ジューダスのため息が静かに聞こえてきた。


「ハジ、私はカインが必要だ、カインにしかできないことがある。それと私の実力を忘れたのか」


沈黙が流れた。それを破ったのはハジの鎧であった。
ドアノブが回り急いで隠れた。
少し遠くで部屋を出たハジを心配そうにスイが見ていた。下を向いているハジの手をとりのぞきこんだ。


「元気だしてハジ、陛下には陛下の考えがあるのよ、それにカインが陛下を殺そうとすれば私たちが殺せばいいわ」


ニコッと微笑むとハジはスイの頭をなでた。そして二人は自室へ戻っていった。


「綺麗な顔して怖いこというな」


カインも戻ろうとしたとき部屋から信じがたい、ロイヤルとジューダスの会話が聞こえてきた。
カインは必死に自身の記憶をたどった。
しかし覚えがない。







『珍しいですね、陛下が初対面の人を信用するのは』
『初対面というわけではない、私は昔カインと会ったことがある。だから信用できるんだ』






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