The White Rose Of Virginity(完) 3 「アポロ!みてぇ、すごいよぉ」 「ちょっ、頼むから動かないでくれ、フィニ。心臓が持たない」 椅子から立ち上がろうとしたフィニを急いでアポロは止めた。フィニの手には今朝の新聞が握られていた。 「ほら、ここぉ。アポロが乗ってるぅ」 フィニは嬉しそうに笑った。 「その新聞なら自分も今朝、読ませていただきました」 ダコタも新聞を覗きこんでいった。戦争以来、ダコタはアポロの補佐官として仕事面でアポロを支えてきた。 「アポロのくせに新聞の一面とってんじゃねぇよ」 ダコタの恋人にしてフィニの兄、クコウは鼻で笑った。 「うるせぇよ」 「自分は総帥の補佐官として自慢できます」 その記事にはこう書かれていた。 【天地戦争の英雄、アポロ・ジュノーのその後】 という題名から始まっていた。 【天地戦争でわずか15歳ながら大活躍した元騎士団総指揮官、英雄アポロ・ジュノー氏は数ヶ月前、忽然と世間から姿を消した。しかし、先日、アポロ・ジュノー氏は騎士団でも軍でもない新たな組織を発表した。その名は神話にもよく出てくる神の楽園より“エデン”と称された。エデンは治安維持目的でなく、アポロ・ジュノー氏曰く、世界のための組織だという。エデンは世界の均衡と平和を護るためだけの存在するそうだ。アポロ・ジュノー氏はエデンの説明について、大きくエデンの中では二つに分かれるという。エデンの中では情報伝達のガーデナーと行動に移すシアンに分かれるという。アポロ・ジュノー氏は現在、最愛の妻、ミセスジュノーとの間に三つ子をもうけ、来月出産予定だという。最後にアポロ氏よりエデンに入りたいものは面接にきてほしいとのこと】 ダコタはある一枚の紙をアポロに渡した。 「今朝だけでもすでに数十人が面接の応募にきました」 アポロはパンをかじりながら、目を通していく。その時、皿の割れる高い音が響いた。 見ると、フィニがおなかを押さえて倒れていた。 「フィニ!?おい、出産は来月だろ」とクコウ。 「大丈夫か?フィニ」 フィニの額には汗が滲んでいる。 「ん!う、産まれる」 クコウとアポロが言葉を失った。そんなこんなしているとフィニの足の間から大量の水が出てきた。 「ま、まず病院に…」 「だめです!」 病院に連れて行こうとしたアポロをダコタは止めた。 「破水しました、子供はもう生まれてしまいます。私が赤ん坊を取り上げます」 「取り上げるってダコタ」 「大丈夫、クコウ。自分は第七部隊出身です。出産については学んでいます。すぐにお湯と大量のタオルを用意してください。自分はフィニをベッドに寝かせます」 クコウとアポロは急いで家中を駆け回った。 [*前へ][次へ#] |