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The White Rose Of Virginity(完)
8

アポロは身だしなみを急いで整え、髪もちゃんと整えた。そして目の前の扉を開いた。
そこには赤毛の女の子、フィニがベッドにこしかけ、兄であるクコウと楽しそうに話していた。フィニは扉が開いた音に気づき、アポロに視線をやった。


「アポロ!」


フィニは嬉しそうにベッドから飛び降りて、アポロに抱きついた。


「うおっ!元気か?フィニ」

「うん、元気だよぉ」


フィニはベッドに戻り、アポロはその隣に椅子を持ってきて腰掛けた。そして一瞬、目の前のクコウに殺気だたせた。


「へぇ〜、あんたちゃんと返させてもらったんだ」


意味深な笑みを浮かべて、アポロは言った。それにクコウは頬を引きつらせながらも笑顔を作った。だが、何も言わない。


「あんたのおかげで結構な情報が手に入ってさ、礼言っておくよ」


嫌味な感じでアポロはクコウの肩に手を乗せた。


「兄さんとアポロって仲がいいのぉ?」

「まさか!こんな嫌味なやつ」


クコウは嘲るように笑った。
そこで、アポロはフィニの顔色が以前より格段によくなっていることに気づいた。


「フィニ、お前顔色すごくよくないか?」


フィニのやわらかい頬に手をあてた。骨と皮だけの体ではあるが、あきらかに肉はついた。フィニはくすぐったそうに笑った。そして思い出したようにアポロに言った。


「そういえば、兄さんから聞いたけどぉ。ボクの病気の治療費がこの間ねぇ、誰かがおつりがでるほどの大金で払ってくれたんだってぇ」


そういってフィニはアポロに一枚の領収書を渡した。
そこには、騎士団監査部隊部隊長の文字が。


「これって、アポロだよねぇ」


アポロは苦笑した。たしかにこの肩書きは自分だが、書いたのは自分ではない。この読むのに苦労する汚い字は、シエラだ。教養のないシエラの字だ。仕事が始まってすぐのとき、彼女は野暮用があるといって、半日帰ってこなかった。きっとあの野暮用はこれだったのだろう。


「借りを作りっぱなしってのは、嫌な性質なんでね…」


ボソッとクコウはアポロに耳打ちすると、病室を出て行った。
アポロは領収書を適当に懐に入れた。クコウがいなくなると、フィニはアポロに抱きついた。


「フィ、フィニ!?」


思わず、声が裏返った。


「ボクねぇ、兄さんから全部聞いたんだぁ。兄さんが貴族に雇われてアポロを殺そうとしていたのも、アポロの身分もぜ〜んぶ聞いたんだ」

「……………」

「この一週間、ボク、もうアポロに会えないって思ってた。だって、兄さんはアポロを殺そうとしていたから会いにきてくれないかと思ってた。アポロからの領収書をみたとき、もう会えないって思ってた」


フィニは小さいこのように泣きじゃくり始めた。


「ボクねぇ、小さいころからずっと病院暮らしで、友達なんていなかった。病院を抜け出しても同い年の子の接し方なんて分からなかった。けどアポロは接しやすかった。ボク、アポロが好きなんだよ」


アポロは嬉しそうに口を微笑ました。
そしてまだ細すぎる、けれど前より断然肉のついた体を抱きしめた。


「んじゃさ、俺が貴族との戦争で勝って、帰ったら結婚してくれない?」


フィニが驚きの声を上げるのが耳元で聞こえた。そして元気よく頷いた。
その後、二人は談笑し、空が赤色に染まりだした頃ころ、アポロは帰宅しようと、フィニを軽く抱きしめた。フィニのくすぐったそうな嬉しそうな笑い声が聞こえた。
病室を出ると、クコウが待合場所に座って、煙草をすっていた。そこに行くと、クコウは煙草の火を消そうとしたが、アポロは気にするなといった。






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