The White Rose Of Virginity(完)
4
「はぁ。」
思わずため息をついた。ルークは顔を上げると、そこには美しいアクラ湖とその横にある診療所兼孤児院を見た。これからスイに会うとなると、胃がしくしくしたのだ。
昔、恋人とも言えるかどうかの関係だったスイとの間柄。体の関係は何度かあった。それは認める。しかしはっきりとハジとノアのような恋人関係まではなかった。だがお互い想い合っていたのも、いまだに想いあっているのも事実。
五年前から姿を現さなくなった自分。理由は研究が忙しかったのもあるが、不老不死になりいつか来る、永遠の別れが来るのが怖かったのだ。要は逃げていたのだ。あの頃より大人にはなった自分。逃げていたのも全部認める。しかしこういざ、会うとなるといやでいやで仕方がないのだ。それは嬉しさもあるはずだ。だがスイは切れると怖い。
なんて悩んでいると、診療所の扉が開いた。
「ありがとよ、おかげですっかり気分がよいわ。」
「いいえ、薬はちゃんと飲んでくださいよ。ではお大事に。」
老婆に優しく微笑む女性。五年前よりも大人の雰囲気がでている。それもそうだ。もう三十五になるのだ。
スイと目が合う。だが頭からすっぽりとマントに覆われた自分を見た瞬間、警戒心を露わにした。スイは中に一旦入るとあの長槍を手に持って現れた。
そして勢いよく迫って来る。なんとかよけたが、地面は割れた。体はなまっていないようだ。
「おい、待て!俺だ。」
急いでフードを取って正体を表して見せた。一瞬驚いた表情を見せるとスイはまたキッと睨んだ。
「早く逃げて!」
後ろでは年長らしき子供が小さな子供を家の中へ、避難させている。
スイは容赦なく攻めてくる。
「スイ!俺の顔を忘れたのか!?」
「ルークでしょ。」
「わかってんじゃねぇのかよ!」
長槍がルークの頬を掠り、血がわずかに舞う。だがすぐに再生される。それを見るとスイはさらに攻撃のスピードを速める。
「ちっ」
ルークは光槍でスイの長槍を弾いた。長槍は飛ばされ地面に突き刺さった。すると今度は殴りかかってきた。
「うわっ。」
そこまでするとは思っては居なかったルークは石に躓き転んだ。スイもその上に倒れる。スイはルークの上に馬乗りになり、何度も胸を叩く。ルークは何もせず気が済むのを待った。しばらくしてスイはルークの胸倉をつかんだ。頬に雫が落ちてきた。
スイは泣いているのだ。
「どうしていなくなったの?」
「……………」
「研究が忙しいのはわかっているわ、でも、どうして一年に一回の森に入る日でも、来なくなったの?」
「悪ぃ。」
「どうしてよ。」
「……………」
「私が死ぬのが怖いの?」
ルークはスイを見上げた。こんなにも美しいスイでも老いていく。まだ三十五歳だが、いずれは老いていき死んでいく。
「あぁ、怖いよ。怖いさ、だから俺は逃げた。今でも逃げてる。」
スイはルークを殴った。
「私だって怖いわ!」
ルークは目を見開いた。
「私は老いていく、老いて死んでいく。だけどあなたはその若い姿のまま死ぬこともなく、ただ生きていく。そんなあなたをおいて死んでいくのが怖いわ。我侭だってわかっているわ。けれど、だからこそ今を大切にしたいのよ。大切にして、あなたと生きて生きたいの。」
ルークはスイを抱きしめた。
「悪かった、お前の気持ち考えずにいた、悪ぃ。これからは顔をだすよ。」
スイが頷くのが分かった。
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