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The White Rose Of Virginity(完)
5

土が血を吸い取っていく。レインズは左腕を切り落とされ、額に汗を滲ませていた。ルークは急いで再生の手伝いをする。


「様子が、おかしい。」とレインズ。


【それ】の動きが止まった。風が【それ】を包んでいく。
結界の中ではアルスが目を覚ました。


「大丈夫?」


「うん。」


アルスは【それ】の様子を見守る。


「平気なのか?」レインズは尋ねた。


「ひとまず、ユノを夢から連れ出すことはできた。あとは彼女自身だ。」


結晶ができた。大きい結晶だ。その中にはユノが目を硬く閉じていた。しかし、すぐにゆっくりと開く。そして手をレインズのほうへ差し出す。

ユノの手が結晶の内に触れる。
レインズの手が結晶の外に触れる。

結晶ごしに二人の手が重なる。

結晶が輝き始める。光が二人を飲み込んでいく。


それが消えたとき、レインズはユノを抱きかかえていた。ユノの服はボロボロで傷だらけだった。傷だらけの手をレインズの胸元にあてる。


「血だらけね。」


「お前もな。」


心臓の音を聞いているのか、胸元に耳をあて目を閉じる。


「あったかい、私、生きてるんだね。」


レインズの涙が頬を伝い、ユノに落ちる。


「一人で抱え込むなっていったろうが。」


強く、強く抱きしめた。


「アルス、ありがとう、あそこから連れ出してくれて。ルークも辛かったよね。ユリアンを守ってくれてありがとう、ノルン。」


みんなを順番に見ていく。



「まさか、あの状態から理性を取り戻すなんて。」


ロイヤルは驚いていた。ロイヤルにとどめをさそうとしたルークをユノは止めた。


「もう再生する力も残っていないはずよ。」


アルスはロイヤルの前にしゃがんだ。


「君は人間を愛していたんでしょ?」


そう尋ねた。彼は目を見開いた。


「私が人間を愛していた?」


「そう、君は百年にもみたない短い人生で必死にいきる人間をうらやましがり、嫉妬し、愛していたんだ。だから、どんなに同胞から忠告をうけようとも、人間との契約をやめようとしなかった。」


ロイヤルは少し驚いた表情を見せ、笑った。


「なるほど、そうかもしれませんね。」


ロイヤルはもう息をするのも必死なユリアンを見た。傷口は光となり、しに始めていた。そしてユノを見た。


「あなたは最後まで面白いものをみせてくれましたね、ユノ・セントヘレナ。私が死ねばあなたちとの契約は消え、あなたが忘れていったものはすべて戻ってきます。あなたの勝ちですよ。」



その瞬間、ロイヤルの体は光になった。


「人間に溺れた哀れな魔族、か。」



キセルから出る煙が消えていった。




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あきゅろす。
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