The White Rose Of Virginity(完) 2 レインズは怒りに身を任せ、地面を蹴った。魔術で加速する。ロイヤルに魔法剣を振り上げる。 ロイヤルはなんとかよける。だが、視界の端で自分の髪がわずかに宙を舞っているのが見える。背後からはユノが魔術を発動させる。地面に魔法陣ができる。重力を増大させる魔法だ。だが、相殺される。ルークは空気中の水素をあつめ、キセルから火をだす。たちまち、ロイヤルの姿は爆発に飲まれていった。 「効いたか?」 レインズが目を凝らす。 「いや、まだだよ。」 アルスが言う。 「ククッ、少しなめていたようです。」 煙の中からロイヤルが現れた。無傷だ。いや、傷はあったのだろう、既に再生されている。 「ごめん、レインズ。」 ユノが小さくいう。レインズが彼女を見たとき、既に遅かった。背中の刺青が輝きだす。 「やめろ、ユノ。」 ユノはわずかに微笑むとロイヤルをにらんだ。 「分かっているのですか?契約が進めば進むほど、理性が失いやすいということを。」 「分かってるわ、でもそれぐらいの覚悟がないと、あなたを殺せないって分かったから。」 ユノの肌が褐色になっていく。瞳が銀色に、両腕から無数の刃、背中には翼が。 「レインズ、理性を失ったらすぐに殺してね。」 笑顔でユノは言った。 「行くな、ユノ!!」 目にも止まらぬ速さでユノは突っ込んでいく。ロイヤルはなんとか応戦する。魔術で光槍を出すが、両腕の刃のせいで消される。地面からでは翼のせいで逃げられる。 「クッ。」 おびただしい血が地面にこぼれる。ボトッという重量感ある音とともにアルスの傍にロイヤルの腕が落ちた。 「あれは一体?」とルーク。 「あれはユノがロイヤルとの契約で手に入れた魔族の力だよ。」 アルスは答えた。レインズは辛そうに顔をゆがませ、ユノの姿を追いかける。 「けれど、あれには欠点があってね。契約が進めば進むほど力は強大になる。それと同時に理性を失いやすくなるんだ。」 「理性を失う?」 「簡単に言えば見境もなく破壊衝動に走るってことだ。」 ルークはユノを見た。 ユノは片腕をうしなったロイヤルを追いかけている。 「理性はまだあるようですね。」 額に汗を滲ませながら、ロイヤルは言った。 「余裕ネ。」 ユノはさらに加速する。ロイヤルの腹を無数の刃が貫く。 「ガッグッ。」 うめきながら血が落ちる。何とか刃を抜き、逃げようとした瞬間、ロイヤルは地に体を叩きつけられた。左足をきられたのだ。再生ができない。 もう終わりだ、と思ったとき、ユノが苦しみ始めた。 「う、あ、あぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」 背中の翼を刃に変えて自身を傷つけ始めた。 「おい、何が起こった!?」 「理性を失い始めた、痛みで理性を保とうとしているんだ。」 と、その時、レインズが走り始めた。 「「「レインズ!?」」」 三人が叫ぶ。 ユリアンは目を何とか開けて、レインズの背中を見る。 ユノは頭を抱え、苦痛に叫びながら、自身を傷つけていく。そこへ違う感触がした。暖かい。 「レインズ。」 レインズがユノを抱きしめ、背中にユノの刃を受けていた。 「やめ…て。お願い、」 ユノの唇が動く。レインズは目を見開き、涙を流す。 「安心しろ、ユノ。俺が連れ戻してやる。」 レインズは力を解放する。ユノの膨大な力を吸収して、理性を取り戻そうとしているのだ。 二人が光に包まれる。 [*前へ][次へ#] |