The White Rose Of Virginity(完)
6
研究所はもはや、原型などとどめていなかった。ただの瓦礫の山であった。足元を気をつけながら進んでいく中、ノルンはずっとアルスの腕にしがみついて震えていた。思い出すのだ。イノセンスによって実験を受けさせられていた日々を。アルスは静かにノルンを抱き上げた。ノルンはアルスの首に抱きついた。
「大丈夫、イノセンスはもう死んだんだよ。」
ノルンはただ震えていた。
それをルークは横目でみて、キセルをすっていた。
奥へ進んでいく。そして、トールの眠っていた部屋にたどり着いた。
「ここは?」とルーク。
「父さんが眠っていたところよ。」
「父さんてどんな人だったか姉ちゃんは知ってんのか?」
「いいえ、私もただイノセンスから聞いたぐらいしか知らないわ。私が生まれる前に殺されたんだから。」
「それだと、ルークとユノは半分しか血が繋がってないってことか?」とレインズ。
「そこはイノセンスの頭の良さのなんらかの方法で、父さんから遺伝子をとっていたの、血はしっかりと繋がっているわ。」
お目当てのものが見つかったのか、ユノは走り出した。トールの眠っていた水槽の中に入って、何かを探っている。それを見つけると、ルークに渡した。
それは小さなペンダントだった。
「これは?」
「イノセンスが父さんに送ったもの、私は二人の結婚指輪をもらったから、ルークにはこれを、と思って。父さんを水槽から取り出したとき、見当たらなくて、もしかしてって思って今日、ここに来たの。」
ユノはアルスにだっこされているノルンの頭を撫でた。
「ごめんね、ノルン。辛かったよね。」
「寝てるみたいだよ。」
ノルンは気持ちよさそうに寝ていた。
「震えすぎて疲れたみたい。」
クスッとユノは笑った。ルークは手の中にあるペンダントをジッと見ていた。
「私も父さんのことをあまり知らないけど、少なくとも母さんも父さんも幸せな日々があったはずよ。それがこのペンダントと結婚指輪が証明してくれている。母さんのことを憎いってのはわかる。私も同じだから。だけど、それはつけていて欲しいの。」
ルークは何も言わず、ペンダントをつけた。
「出るか。」
レインズの声に頷きが返ってきた。
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