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The White Rose Of Virginity(完)
3


「これからどうするんだ?」


夜、焚き火をおこしながらレインズは尋ねた。


「特にないわ、あるとすれば休息ぐらいでしょうね。レインズは何かしたいことあるの?」


干し肉を渡す。


「お前は?ってごめん。」


レインズはすぐに謝った。ご飯を食べてれないユノにご飯を食べない理由を尋ねようとしてしまったのだ。
ユノは微笑んで首を横に振った。


「別にいいわ、私が自分で選んでやったことなんだもの。」


レインズは口角を軽く上げた。


「隣国との国境付近にあるアリューシャンっていう町にある何でも屋って知ってるか?」


ユノは頭を抱えた。


「ごめんなさい、もう頭の中の記憶は途切れ途切れにしかないの。あなたやルークみたいによく知っていう人ぐらいしか思い出せなくなってきてるのよ。」


レインズはユノを抱きしめた。彼女の体は震えていた。


「ジアとイサクって覚えているか?」


ユノは記憶を必死に探った。わずかにだが思い出せた。


「えぇ、褐色の肌の子とたしか…気の強い女の子でしょ。」

「あぁ、そこに住んでるんだ。ストウって子供もいた、会ってみないか?することないんならさ。」


ユノはレインズの服をつかんだ。


「えぇ。」


小さく返事をした。
レインズはユノの頭を自分の胸にうずめさせた。安心するように。ユノは大きく何度も呼吸をする。
不安なのだ。あの計画が成功するか。すでに自分の考えた計画のせいで犠牲者が現れた。他に犠牲になる人がでるのが怖いのだ。そのジアとイサクも殺されるのでは、と。もう顔も薄れてきた血の繋がらない妹、部下たち。みんなが自分のせいで巻き込まれるのかと。
レインズはそれをすべて感じ取ったのだ。


「ユノ、聞こえるか?」


ユノは耳を澄ました。すると、力強いドクン、ドクンという音がする。気持ちが自然と落ち着いて安心してくる。


「俺は生きてる、これからも生きる。」

「…………」

「生きてみせる、あの計画にどんな犠牲がでるのか俺は知ってる。」


ユノは目に涙をためて、彼の顔を見上げた。彼は微笑んでいた。


「知ってたの?知ってて私に協力してるの?」

「ルークもだよ、あいつもお前を助けたくてまた“モノ”になった。俺は種だからわかんだよ、成功しやがった。」


うなるように言った。


「私のせいよ、私がみんなを巻き込んでる。」

「違うな、みんな、お前が好きだから手伝ってんだよ。ルークもアルスもノルンもみんな。イサクとジアは俺たちに感謝してたよ、俺たちのおかげで幸せだってな。ノアはお前がいなきゃイノセンスに殺されてた、お前がいたから強くなった。」


レインズは草むらのほうを向いて笑った。


「ほら、笑わねぇと恥ずかしいぞ。」


レインズと同じほうを向いた。草むらがわずかに動いている。そこからはルーク、アルス、ノルンが現れた。


「みんな…」

「ごめんな、姉ちゃん。」


ルークは申し訳なさそうに下を向いた。


「ルーク、いいのよ。」


そういってユノはルークを抱きしめた。


「ったく、なに私より背、高くなってるのよ。」


五人は焚き火を囲み談笑を楽しんだ。おもむろにいつものようにキセルをルークは取り出し、すい始めた。
それを嬉しそうにユノはニコニコと眺めていた。


「なにみてんだよ!」


顔を赤くしながらルークはそっぽを向いた。


「そういえばルークっていつもそれ、大事そうに持ってんよな。」


レインズはキセルを指差した。


「大切な人からのプレゼント?」

「アルスならわかるんじゃないの?」とユノ。

「“モノ”にたいして力を使うのは疲れるんだよ。」


なるほどと皆頷いた。


「それよりダレからの贈り物なんだよ。」


ニヤニヤとレインズは笑う。


「私からよ。」


ユノが言った。


「私が騎士団に入ったばかりのころにね。ルークの成人の祝いで送ったの。」

「お前、本当ユノ大好きだよな。」


半笑いで言われたルークはレインズの胸倉をつかんだ。


「てめっ!」

「あたし、それなんていうか知ってるよ、シスコンって言うんでしょ。」


ノルンの言葉に一同は動きを止めた。ノルンはいつもワンピースに裸足という格好、見た目も中身ももっとも年齢が低い。
レインズなど実年齢はすでに老人といえる、ユノでさえ世間でいう中年、ルークは成人、アルスでも十代半ばだ。だが、ノルンはどうだろう?
どこからみても十歳にやっとなったか、なってないぐらいだ。


「アルス?私、ノルンのことちゃぁんとお願いしたはずよね?」


黒い笑顔を浮かべながらユノは訪ねた。アルスはすぐに弁解を始めた。


「待ってよ、僕だってノルンの前でも、そうじゃなくてもそういう言葉は一切だしてないよ。他の誰かがだそうとしてもノルンの耳には届かないようにしてたし。」


ユノはルークを見てため息をついた。


「何で俺みてため息つくんだよ。」

「ルークがそんな汚い口調になったのはどうしてかなっておもって。やっぱりゼイの元で育ったせいかしら。」

「だろうね。」


アルスは憐れみの表情をうかべた。


「ユノ、お前は十分頑張ってたよ。」


レインズは慰めるように言った。


「なんで俺が全部悪いみたいになってんだよ!!!!」


そんなこんなでノルンのシスコン発言はいずこへ。






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