The White Rose Of Virginity(完)
5
また出たなくした記憶。
「すまない…昔のことは、よく思い出せないんだ。」
ユノは目の前の資料に目を落とした。
「まぁいいけど、それより“モノ”を見せて。」
ユノは右手に炎を生み出し、それを近くにあった観葉植物に投げつけた。炎は一瞬で観葉植物を包み込み、そして灰にした。
「呪文もなしに炎を生み出すなんて!」
リカーが驚きの声を上げた。
ユノは服を脱ぎ始めた。
「ちょっ!何してんのよ!?」
イラエの声も聞かず、ユノは脱いでいく。リカーは目を逸らし、ルルは赤面する。長は驚くことしかできない。ロイヤルはユノの脱いでいく服を拾うだけ。ユノはすべてを脱ぎ終わると背中を見せた。
「これが“モノ”の正体だ。」
背中の魔法陣にルルは興味をそそられた。他の三人もだ。魔導師としては当たり前の反応だ。ユノは四人の記憶に残る前に服を簡単に羽織った。
「“モノ”は魔導師の血で作られるんだ。だが普通の人間に入れるせいで完全な“モノ”はほんの一握りだ。それが私とアルスとノルンの三人だ。失敗すれば、力を暴走させてしまう恐れが生まれたり、拒絶反応が出たりする。拒絶反応が出るものはあまりいないが、出てしまえば体が耐え切れなくなり、死に至ることもある。」
「その力でアルスは心を詠む力を、ノルンは未来を見る力を得た。“モノ”が共通する力と個々の力を教えてくれ。」
ルルが問うた。
「共通する力は魔術と再生能力だ。致命傷でもたいていの傷は再生できる。アルスの力は心を詠んだり、触れるだけでそのものの気持ちや感情を知る頃ができる。ノルンは未来を見ることができる。私は一度見たものは記憶できる、今は分け合って記憶を失くしていっているが…。あと触れたものは人物、物資関係なくそこでなにがあり、どういうことが起こったのか知れる。」
「君の持つ力は脅威だ。僕たち魔導師にも人間にも、消すことはできないのか?」
リルーが尋ねた。ユノは首を横に振った。
「昔はあった、だけど“モノ”が成長してしまった。本来ない力を生み出したんだ。最初は魔導師と同等、それ以下しか力がなかった。今は力を何度も使うことに強くなった。筋肉みたいにな。」
残念そうにユノは言った。
だが、すぐに顔をあげた。そこには迷いのない王がいた。
「さて、そろそろ会議を終わらそう。」
王はそう言って、目の前に座る長を見据えた。
美しい、銀瞳で。
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