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The White Rose Of Virginity(完)
1

今から四十年前。まだ世界中に魔導師が居た頃、エリス戦争は開戦した。始まりはアムステルダム王国。
隣国もアムステルダムに促され、魔導師との戦いを始めた。そしてすべては魔導師の村、アトラスから始まった。
アトラス、この穏やかな村でレインズ・フィアデルは生まれ育った。レインズは黒髪に琥珀色の瞳をしていて、魔術の腕は最高だった。誰もが彼を一目置いていた。
しかしレインズは戦いを嫌い、戦争には一切参加していなかった。ただ村に近づく人間を追い払うぐらいだった。


「レインズよ、お前は戦争にこのまま参加しないつもりなのかい?」


レインズの母、クロウは尋ねた。レインズの父は彼が幼い頃、病で亡くなった。レインズは母に困った表情を向けた。


「お袋、何度も言うけど俺はあんな無意味なものに参加する気はない、戦いに勝ってなんになるわけ?なんにも生まれやしない。憎しみがうまれるだけさ」


母は諭すようにレインズの肩をつかんだ。


「お前には才能がある。なぜそれを同胞のために使おうとは思わぬ?」


レインズはクロウの手をゆっくりとどかした。


「別に見殺しにしたいってわけじゃない。ただ憎しみしか生まない戦争に参加する気はないだけだ。隣の家の息子だって、この間、戦争でなくしてあんなに怒り狂ってたじゃねぇか。」


クロウはあきらめたように首を横に振った。
レインズは軽く口角を上げた。


「長老がお前のことを呼んでいたよ。」

「行くわけねぇだろ、どうせ戦争に出ろって説教くらうだけだ。少し出かけてくる。」


レインズはお決まりの白と黒のコートを着て家を出た。レインズは家を出ると村の近くにある丘に登った。とても高く遠くまで見渡せる丘だ。
目では見えないが遠くで爆音が聞こえる。
レインズは悲しそうに顔をゆがめた。


「こんなところにいた!」


振り向くとレインズの恋人、イラエがいた。
イラエは嬉しそうにレインズの隣に座った。


「何してるの?」

「くだらねぇなって思ってさ。」


イラエは草の上に仰向けになって青空を見上げた。
短い青い髪が緑と交じり合う。


「レインズは戦争に…って参加するわけないよね……」


イラエは悲しそうに笑った。イラエの兄は半年前、エリス戦争のせいで亡くなった。帰ってきたときは右腕をうしない、左目は刳り貫かれ、体中、剣や槍が刺さっていた。
倒れたイラエの兄を抱きかかえたときの感触は今でもレインズは忘れることができなかった。


「お願い、レインズ。兄さんの仇を討ちにいこう。」


イラエはレインズの腕をつかんだ。レインズは目を逸らした。


「魔導師、見つけた。」


振り向くと騎士が数名いた。
イラエは怒りで顔を真っ赤にして呪文を唱えた。


「やめろ、殺すな!イラエ。」


レインズの言葉に耳を傾けることなくイラエは炎を放った。炎はあっという間に騎士たちを飲み込んだ。
レインズは呪文を唱え騎士たちに水をかけた。


「レインズ、何をするの!?」


レインズはイラエの肩をつかんだ。


「憎いのは分かる。俺だって怒りでどうかなりそうだ。でも殺しは絶対にだめだ」


騎士たちは悲鳴を上げて逃げていた。


「帰ろう、イラエ。」


イラエは悔しそうに唇をかみ締め、頷いた。





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あきゅろす。
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