The White Rose Of Virginity(完) 8 「私のこともあの場所での生活も悲劇についても思い出さないで、なにがあっても思い出そうとしないで。」 「おもいだしたら一体なにが?」 「あなたを殺さないといけなくなる、あのことが二度と起こらないように殺さないといけなくなるの。」 カインはショックのあまり少し後ずさった。 「嘘…だろ?」 上手くしゃべることができない。 「それが契約だから。」 カインはユノの肩をつかもうとしたが彼女は同じだけ離れ、触れることはできなかった。 「明日、私は契約する。もうこれは決定事項。誰にも止められない、私は私の道を歩む。」 だから、ユノは小さく続けた。 「生きて。」 「一緒には生きられないのか?」 悲しげに微笑んだ。 「十分一緒に生きたわ。あなたは忘れているけれど私は忘れない。カイン、あなたに出会えてよかった。」 雨が降る。 「来世があるなら私はあなたを探す、今度はこんな忌まわしいものなしで普通の人として。」 「俺は絶対にあきらめない!お前とともに生きることをあきらめない!!」 雨が激しくなる。 彼女の頬を伝うものも、自分の頬を伝うものも雨か否かわからなかった。 「お前のやるべきことが終わったら迎えにいく、そしたら一緒に旅にでて自由に二人で世界を見よう。」 ユノは目を見開き、嬉しそうに笑った。 本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。 「本当?あの時の同じことをいうのね、それじゃ、そのときまでネックレスは交換しておきましょ。」 ユノはクルッと背中を向け歩き出した。 凛と背筋を伸ばし一度も振り返ることなく歩き出した。 [*前へ][次へ#] |