英雄達の軌跡 誕生 V やがて、ガラクタの中に階段を見つけた。それは下に降る階段で、まっすぐ薄暗い闇に続く。 リーナはその階段をおりた。かなり長く、闇は変わらない。 やがて前方が少し明るくなってきた。 下に降りきると、明るさは更に増した。 天井はひび割れ、そこから日の光が差し込んでいる。 そこは広い部屋だった。 特に物は無く、質素でこの部屋だけ壁も床も金属だった。 その部屋の中心にダニーはいた。 「ダニー!」 「あ、お姉ちゃん」 「駄目じゃない。一人でこんな遠くまで来ちゃ」 「お姉ちゃん、あのね、」 ダニーは部屋の中心の、ある物を指差した。 「あれ……」 「?」 それはカプセルだった。 人の背丈程の物と、それより半分の大きさの物。 だが小さい方は既に割れていた。 「ねぇねぇ、あれってゾイドの卵かな?」 ダニーはワクワクして言う。 「卵って……」 「ゾイド生まれてくるかな?」 ダニーはカプセルに近付く。 「ジークもカプセルから出てきたって父さんは言ってたけど、でも遺跡は殆ど軍が…ってコラ!」 ダニーは顔をカプセルにピッタリくっつけて中を覗こうとしている。 「やっぱりゾイドみたいだよ」 「ダニー!迂闊に近付かないの!」 リーナはダニーを引っ剥がそうと駆け寄った。 「これが生まれたら、念願の僕のゾイドが…」 ダニーが言い終わる前に、どこからか「ピシッ」という、何かが割れる音がした。 「な、何の音?」 音は止む事無く、ピシッからバリバリに変った。 カプセルが怪しく発光し始めた。 「ダニー!」 リーナはようやくダニーを引き寄せカプセルから離した。 カプセルは更に、心臓の鼓動のように光り、ひび割れは全体に及んだ。 「生まれる…」 鼓動が一際大きくなり、ひび割れも光も一旦止まった。 ほんの一時の沈黙の後、 「!」 カプセルが完全に割れた。 立ち込める水蒸気の向こうに、ゆらりと蠢く影が見える。それはガシャッという硬い音をたてて床に崩れ落ちた。 ダニーは駆け寄る。 「あ、ダニー!」 それはやはりゾイドだった。白銀に輝く四肢はすらりと長く、どんな荒れ地でも駆け抜けそうだ。 「すごい、キレイ…キレイだね?お姉ちゃん」 「え?あ、そ、そうね…」 リーナも思わず見とれていた。 ジークもキレイだと思っていたが、それよりもずっと、美しい。 ダニーはゾイドの横に膝間付く。 [*前へ][次へ#] [戻る] |