短編
選択
ずいぶん前に誰かが言っていた。
『生きることには常に痛みを伴う』
何かを得るためには必ず、それ相応の代償が必要なのだと。
ならば自分が今捨てようとしているものの代わりに得られるものがあるのだろうか。
自分はきっとそれを知る事はできない。
それが出来るのは、生き残った者だけ。
後に英雄と呼ばれる者。
息を整える。
傍らに立つ己の半身は、私を責めるだろうか?
遠くで剣を振るう彼は、私のために泣いてくれるだろうか?
友人達は?世界中の人たちは?
後悔は、無い。
そう何度も自分に言い聞かせる。
とても長い時間だった。
でもほんの一瞬の間。
覚悟を、決めなくては。
そして彼女は、
「お願い。あなたならできるはずよ」
再び、終わりを選ぶ。
[前へ]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!