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短編
眠れる君に

「髪、切ろうかな……?」

鏡に映る己の顔を見て、リーゼは呟いた。
自分でも分からないが、髪を伸ばす事に抵抗があったのかもしれない。伸びたと思えばすぐに切っていたから、長かった時があったのかは、今ではもう覚えていない。

髪が伸びた自分は想像できない。
そんな自分はまるで、


「このままじゃなんか女みたいだ」

事実に変わりは無いが、やはり何か違和感がある。
サラリと髪を梳いてみる。

やはり少し伸びた。


そう言えば、前にレイヴンがこんな事を言っていた。



―髪、伸ばさないのか?



すぐにどうして?と聞いた。だが彼は答えなかった。


「長い方が好きなのかな……」

―伸ばしたら喜んでくれるかな?


なんて事を思ってみる。
そして、以前フィーネがくれた髪紐を取り出し、結んでみる。
まだ髪の長さが足りなくて上手くまとまらない。
でも、少しだけ頑張ってみようと思う。

頑張って伸ばしてみよう。

そうしたら、また何かが変わるかもしれない。
髪紐を元の場所に戻し、リーゼは寝室に戻る。

中央に置かれたベッドでは、まだ彼が寝息をたてていた。昨夜はだいぶ遅くに帰ってきたから、疲れているのだろう。
既に陽は上りきり、眩しい陽射が部屋に射しこむ。

彼の安らかな寝顔にやんわり微笑みを落とし、キッチンへ向かう。

彼がいつ起きても良いように、コーヒーだけは用意しておこう。



fin



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あきゅろす。
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