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スマブラ
ロイは哲学を放棄した。



現在、午後の3時過ぎ。

ただいま、2階のDXコロシアムでは余ったおやつを巡って猛者どもの激しいバトルが繰り広げられている。

参加者は子供リンク、ネス、クッパ、ドンキー、ディディー、カービィ、ロイだが、開始5分にして子供リンク、カービィ、ロイを残して戦場から去っていった。



「いやぁぁああああっ!」

「やーーーんっ」


ロイがカービィにエクスプロージョンを打ち込めば、体重の軽いカービィはあっけなく場外へとんだ。


「よしっ!残るは子リンクだけだ!」


子供リンクへ剣先を向けてロイが叫ぶ。


「大人気ないぞーロイ」

「シュークリームくらい譲ってやりなよー」


雑踏から沸き上がる野次に耳を貸さず、ロイは子供リンクに飛び掛る。



「もらったあああ!」



剣を振りおろし勝利を宣言するロイ。
しかし子供リンクは持ち前のすばしっこさでその一太刀を交わし、逆にスマッシュ斬りをかましてくる。

ロイが足場の外へ飛ぶ。
崖に捕まろうとするロイに向かってボムを投げると、子供リンクは剣を鞘に納めた。




GEME SET の声がする。


ロイは惜しくも子供リンクに敗れたのであった。







「ロイ、子供リンク、お疲れ様」


乱闘を終えた2人に、ゼルダがタオルを渡しにやってくる。


「ロイを負かすなんて流石じゃないか子リン」

「ロイも思い切りはよかったんだけど」


付き添って来たマルスとリンクに、ロイは叫んだ。


「俺が子リンに負けるなんて絶対ありえなーいっ!!」


今負けたばっかりじゃないか、とはマルスもリンクも口に出さない。


「飛び道具なんて卑怯だ!剣士なら己の手に持つ剣だけで戦うべきっ」

「そんなに体格差があって卑怯もなにもないだろ?」


指を突きつけ騒ぎだすロイに、子リンクは冷静に言葉を返す。

こんなに小さいのにロイよりも大人っぽいな、とマルスはクスリと笑う。


「そんなことより姫!
俺、さっきの乱闘で3人も倒したんですよ」


嬉しそうに話す子供リンクに、ゼルダも思わず微笑む。


「ええ、見てたわ。やっぱり強いのね!
私の時もあれぐらい本気で戦ってくれていいのに」


リンクとマルスは思わず苦笑い。
以前、子供リンクが敵であるゼルダを保護しようとしていたのを見たばかりなのだ。

子供リンクは自分がいかにゼルダを守ろうとしているかを本人に語り出す。

そしてしばらく過ぎたころに、ロイは咳払いをすると悪い顔をして子供リンクに言った。


「おい、ゼルダさんが引いてるぞ?」


実際ゼルダは、子供がお母さんを守ろうとするような感じかしら?などと考えていただけなのだが、子供リンクはロイの言葉を真に受けてしまう。


「っ姫!あなたが俺の想いを受け止められないのはわかってます!けど……けど…………っ

まだ、好きでいさせてください!」

「あ、子供リンクっ!?」


そう言い捨てて子供リンクは走って行ってしまった。

子供リンクって一体いくつなんだろう……

とても子供が言うとは思えない台詞に、マルスは少し惑う。


「……あの子、どうしたのかしら」


まだ好きでいさせてくださいって、このままじゃ嫌いになりそうってこと?

子供リンクが去っていった方を見て、ゼルダは少し苦悩する。


「私、何か嫌われるようなことしてたかしら?」


まさか、とマルスは否定したが、リンクは無言を貫いた。

肯定したわけではない。
子供リンクの暴走の余波が彼を襲っているのだ。


あれは、告白だよな……?


自分も早くするべきか、と考えたが、すぐに考え直す。
ゼルダは告白だと受け取ってなかったし、今のは無効だ!


そんなことより、自分より先にゼルダと親密な関係にならないように見張っておく必要があるな、と、リンクは改めて認識した。


子供相手にこうも余裕のない態度。

リンクも子供リンクには劣れど暴走癖がありそうだ。





「これで邪魔者はいなくなった……!」


子供リンクが走っていった方を見据えながら呟いたロイに、リンクはハッと目をやる。



「ゼルダさんっ!
一緒にトレーニングにつきあってもらえないですか!?」

「っなにを言うんだバカっ!」


リンクはロイに食ってかかった。
マルスも怪訝な顔をしてロイを伺っている。
が、言われた本人は嬉しそうにその誘いにのった。


「もちろんいいですよ。
リベンジに燃えるなんて素敵なことですもの!」

「やった!ありがとゼルダさんっ!
じゃあ早速やりましょー!」


ロイはゼルダの手を引きトレーニングルームへ向かう。




「……ちょっと待てロイーっ!」


ここに剣の達人である俺とマルスがいるのにわざわざゼルダを名指しするなんておかしいじゃないか!


下心を感じて、リンクはロイ達のあとを追いかけていく。
楽しいことになりそうだ、とマルスもにこやかに笑いながらトレーニングルームへと向かうのだった。




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