スマブラ
マルスとレディは仲がいい
「はいゼルダっ!あなたの分の紅茶!」
「ありがとうピーチさん」
ゼルダは笑顔でティーカップを受け取った。
「それじゃ、はじめましょ♪」
少し大きめのテーブルにひかれたおしゃれなランチョンマット。
切り分けられたショートケーキに、バスケットに入った美味しそうなクッキー。
そして、先ほどピーチが煎れたばかりの紅茶。
ピーチのかけ声とともに、麗しい女性陣のティータイムが始まった。
「えへへ、いただきまーす!」
ナナが嬉しそうにケーキに手を伸ばすのを、ピーチ、ゼルダ、サムスは微笑ましげに見ている。
「……ぅっ!?」
「ナナちゃん、どうしたの!?」
急に顔色を変えフォークを落としたナナに、ゼルダが慌てて立ち上がる。
「ナナ!!はやくこの紅茶を!」
ピーチからカップを受け取ると、ナナはすぐさまそれを飲み干した。
ぜいぜいと息を荒げるナナに、サムスはため息をつく。
「また失敗だな、ピーチ」
「こうもうまくいかないと困っちゃうわ」
実はピーチ、紅茶は上手く容れられるのに料理はからっきしである。
毎回サムスの指導を受けてはいるが、一向に上達の兆しを見せない。
「安心してピーチさん。ナナちゃん、もう大丈夫そうよ」
「大丈夫じゃないよゼルねぇ!
お口の中がまだ苦いよう〜!」
泣きつくナナを苦笑いしながらみんなで宥める。
これはお茶会の恒例行事だ。
ピーチもそうだがナナも学習しないなぁ、とか、サムスはそんな想いで紅茶を啜る。
「どうしてゼルねぇやサムスがお菓子作らないの?」
膝の上で涙目になりながら聞いてくるナナに、ゼルダが曖昧に笑う。
見かねたサムスが助け船を出そうとしたそのとき
「やあ、お茶会なんて素敵だね」
「あら、マルス王子じゃない!」
何も知らないマルスがやってきた。
ナナはしめた、とクッキーのバスケットを抱えると、ひょいとゼルダの膝から降りる。
「マルスさん、クッキーあげる!」
「あぁ、ありがとう」
マルスは笑顔でクッキーを口へ運ぶ。
「オーノー!?なにしてるのよナナ!」
殿方にあんなまずい料理を食べさせるなんて!と青ざめるピーチ。
どうやら自覚はあるらしい。
「ぐっ……!」
マルスは口元を抑えた。
まずい!まずいけど、ここでそんな事を言ったら紳士じゃない……!
「お……おいしいよピーチ…………」
そんなに顔を青くして何を言う。
マルスのフォローはすごぶる不自然なもので、ピーチはむしろ謝りたくなった。
「まあ、クッキーは成功してらしたのね!」
喜びの声をあげるゼルダに、一同はえっ!?と彼女の方を向く。
「私もピーチさんの練習の成果、いただきますね」
「……えぇ!どうぞどうぞ♪」
「ちょっピーちゃんなに言ってるの!?」
まずいのは自分もよく知ってるでしょ!?とナナがピーチを仰ぎ見る。
ピーチは、それはもう楽しそうな顔をしていた。
友人にあんな毒物を与えたのしむだと!?
サムスは、ピーチにほんの少しだが畏怖の念を抱く。
「ゼルダ、やめておけ!」
サムスの説得もむなしく、ゼルダの指がクッキーを摘んだ。
「さあゼルダ、一口でパクッと!!」
食べるように促すピーチをサムスとナナが沈める。
「ゼルダ、食べるなよ!」
「絶対食べちゃだめだからね」
二人の叫びに聞く耳持たず、クッキーをくわえようとゼルダは口を開いた。
その頃、マルスは悩んでいた。
悩んで悩んで悩み抜いた末に、彼は男になった。
ゼルダが今にも口に入れようと手に持ったクッキーを、自分の口に入れさせたのだ。
「っあら……」
「ワアオ!」
「「………………」」
「……〜っっ」
バキバキゴリゴリ。
妙な音を立てマルスはクッキーを噛み下した。
少し顔の赤いゼルダを見て、マルスが最後の気力を振り絞って言う。
「ご……ごめん、びっくりさせたよね…………。ただ……」
どうしてもクッキーが食べたくて。
そう言って地に崩れたマルスに、サムスとポポは思わず涙した。
ピーチだけは、ゼルダの崩壊した姿が見たかったのに、と少しがっかりしていたが。
「マルス王子!……しばらく休ませておいた方が良いわね」
ゼルダは身動きひとつしないマルスをすぐそばの木陰へ移動させると、再びイスに腰掛けた。
こういうとき力を魔力で補強できるのは大変便利である。
「しかし二口で倒れるなんて、見た目どおりやわなやつだな」
行動自体は男らしかったが、とサムス。
マルスさんが弱いんじゃなくてピーちゃんのクッキーが強烈すぎたんじゃあ…・・・、とナナは思ったが、口にはださない。
「マルスさん、疲れてたのかしらね。いきなり倒れちゃって……
階段だったら危なかったわ」
どうしてマルスが倒れたのか、未だに気づいていない者が一人。
まあ別に教えなくても不便はないので誰も説明しようとはしないが。
「マルスさん、運がよかったわよね。ふふふっv」
ピーチの言葉に、ナナは乾いた笑いをこぼす。
サムスは、マルスが不憫すぎて笑えない。
とにかく話を変えよう。
「そういえばマルスは、あのなりで相当の剣の使い手らしいな」
「ああ、お強いわよね、マルスさん。
この前シークが戦ったけれど負けてしまったわ」
「シークはもう少し装備品を見直すべきだと思うわ。
全身タイツ、軽いけど弱そうだもの!」
「でもファルコンも同じ服なのに頑丈そうだよ?」
話していると時間がたつのは早いもので、あっという間に日が暮れた。
ワドルディが何匹か、夕飯を食べにテーブルの横を通り過ぎ食堂へ向かって行く。
「ワ〜ド〜ルディーっ♪」
「あらあら、ふふっ」
ワドルディのもとへ駆け出しはしゃぐナナを、ゼルダは笑って追いかける。
ワドルディはかわいい。
ゼルダはワドルディをほふほふするのが好きなのだ。
ナナはというと、4匹のワドルディをお手玉して遊んでいる。
「わーいボクもーっ!」
「うわっカービィ!!」
ワドルディ達の輪の中に突如カービィが加わり、ナナは驚いて手を止めた。
ポフッポフッポフッポフッ
ナナはワドルディたちの下敷きになる。
「あー、なんでやめちゃうの〜」
「ナナ、大丈夫か」
サムスがナナを立たせる。
「もう、カービィったら!今日はアイクさんと一緒じゃないの!?」
アイクさんがいれば、ハチャメチャなカービィを止めてくれるのに、とナナが呻く。
「アイクももうそろそろくるよっ」
カービィが後ろを向き、つられてみんなも視線を移す。
「あ、来たわ!」
ピーチが手を振ると、アイクが走ってくる。
カービィはすぐにアイクの頭に飛び乗った。
「はぁいアイク君♪クッキーいかが?」
「もらおう」
「っピーチ、お前……」
どうゆうつもりでそのクッキーを配布してるんだ、とサムスはピーチを見る。
するとやはり楽しそうな顔をしていたので、そこからなにも言えなくなった。
アイクがクッキーを頬張るのを、あーあ、とナナは眺める。
「…………」
アイクは顔色こそ変えないものの、ひどく眉をしかめた。
「……まずい」
「えっ」
「あら」
「「…………」」
マルスの気遣いがすべて水の泡となった瞬間だった。
「渋くて、固くて、突き刺さる……。かなり危険なクッキーだな。
人の食べるものじゃない」
無表情で感想を述べるアイク。
普段あまりしゃべらない彼にしては、かなりの長文を声に出してくれた。
だが、あまりにもヒドい言いようで、もし私がいわれたら泣いちゃうな、とナナはピーチを盗み見る。
「アイク君、もういっこいかが?」
「致死量まで食わそうとするな……っ!」
二つ目を食べたマルスは未だに起きてないのに、とため息。
ピーチ、実はアイクに怒ってるのか?、とサムスは思った。
「カービィ、食べるか?」
「わーいっ食べるー!!」
アイクがカービィにバスケットを渡すと、彼は早速吸い込みを始めた。
「これで危険物処理は完了だね!」
「今回もまたカービィ行きか……」
私は料理を教える才能がないのだろうか……。
お教え子の醜態にサムスは少し落ち込む。
が、ピーチの料理センスの無さは異常だしな、とあっという間に開き直り、もっと厳しく指導しようと今一度強く決心するのであった。
こういうポジティブな所がサムス嬢の長所の一つである。
「……早く肉を食いに行かないか?」
木陰で倒れているマルスを肩で抱え上げ、アイクが言う。
「アイク、その抱え方じゃだめよ!美しくないわっ!」
姫だっこにしなさい!、とピーチ。
なんだかシュールな絵が生まれそうだなーとナナは思った。
「私、これでもいいと思うわ」
「あら、どうして?」
お姫様抱っこの方が目の保養じゃない、と語るピーチに、ゼルダが笑顔で話を続ける。
「担がれてるマルスさん、なんだかしっくりきますもの」
あ、それちょっと思った
なんてそこにいた者全員が思ったかは定かではないが、すくなくともカービィはそう思った。
ジャストタイミングで意識を取り戻してゼルダのセリフを聞いてしまったマルスは、今なにを思っているのだろう。
そう考えると、カービィは笑いを堪えきれなかった。
帰り道は和気藹々
(マルス、いつまで寝たふりするんだろ)
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