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スマブラ
子供リンクは自由人である。



「さあ姫、お手をどうぞ!」




ハイラル神殿の片隅で、少年は膝をつきその細い腕を伸ばした。

ゼルダは、ひどく困惑した面持ちで少年を見つめていた。



「え、と………」

「安心してください!いくら小さくても姫くらいなら余裕で引き上げられますから」



彼女は今、崖の端に捕まっている状態で、彼が笑顔で差し伸べてくれた腕は確かにありがたい。
ありがたいが……



「……子供リンク?乱闘がどうゆうものかご存知?」



今はチーム乱闘中。
青のゼルダと緑の子リンクは敵同士だ。



「もちろん!たくさん撃墜させた方が勝ちなんですよね」

「……………」



まさか、引き上げられたところをスマッシュで……!?


子供リンクを崖から遠ざけなければ。


そう思い、チームメイトのマルスの方へ目をやる。

彼は神殿の中心部で緑チームであるヨッシーと接戦を繰り広げていた。


少し悩んだが、やはり助けてもらおう。



「マルス王子!」



声をあげると、マルスがちらりとゼルダを振り返る。

すかさずヨッシーが仕掛けたスマッシュをカウンターで返し、ダッシュでこちらへ向かってきた。



「子リンク、女性を追撃とは感心しないね」



笑顔で言うマルス。



「マルスさん、邪魔だな……。
姫、ちょっと待っててくださいねっ」



そう言い残し、子供リンクもマルスへと突っ込んでいく。

もちろんゼルダは子供リンクを待つことなく崖を登り、後ろからマルスを狙うヨッシーへディンの炎を飛ばした。
が、ヨッシーはそれを回避し転がってマルスを打ち上げる。



「よっしゃあっ!」

「マルス王子っ!」



ゼルダが止めようと飛び出したが間に合わなく、子供リンクはマルスを場外へふき飛ばした。

仕方なく子リンクのリーチ内からフロルの風で逃亡するが、これがまずい。下にはちょうどヨッシーが待ち構えている。
スマッシュが当たれば自分も場外だろう。


スコアの差が開いてしまう……!

思いながら為すすべもなくゼルダはヨッシーの真上へ落下していく。



「ヨッシー♪」



予想に反して、スマッシュは来なかった。
それどころか、地面に足を着ける衝撃も来なかった。



再びゼルダは困惑した。

何故、自分はヨッシーの背に座っているのか。



「へへへっ、ヨッシーナイス!姫、ご無事ですか?」



何故、自分は敵である2人に助けられているのか。



「君らの中では2対1ってことかい?いい度胸だよね」



ステージにマルスが戻ってきた。
腹黒い笑顔に一瞬たじろぐが、2人ともすぐにマルスに攻撃を仕掛ける。



……私は相手にされていないの!?


ゼルダは少しショックを受けつつも、マルスの側にいきネールの愛で二人を蹴散らす。



「ああ、ゼルダ、危ないから下がっていて。ちゃんと残り時間内に彼ら負かすから」



マルスは相変わらず笑顔だ。

これが本当の笑みなのか腹黒い笑みだったのか、ゼルダにはわからなかった。
ただ、彼が本当にゼルダの手助けを必要としていないことだけは伝わってくる。


彼女はとぼとぼとその場を離れると、座り込んで勝敗の行方を見守った。





ヨッシーは強い。
子供リンクはもっと強い。
だが、今日のマルスはこの中でも最強だった。

2対1、しかももとより-2の差があったのに、6分弱の間にサドンデスへ持ち込んだ。


もちろん、勝ったのは青チーム。

マルスはドルフィンスラッシュでヨッシーを吹っ飛ばし、子リンクはブーメランでマルスを墜落させた。


残ったゼルダはやる気を失い座り込み、子供リンクを見つめるだけ。

だがしかし彼女に手を出せるはずもなく、子供リンクは爆弾自殺をかまし、ゼルダは見事その乱闘を優勝したのだった。





その後、その乱闘を見ていた者の中の一人が子供リンクへ檄を飛ばした。


大人(?)リンクだ。



「子リンク!なんだよさっきの試合は!?」

「ああ、見てたんだ。かわいかったよなあゼルダ姫!
ちょこんって座ってぽけーって俺の事みててさあ!」



嬉々として話す子供リンクに、リンクはふつふつと殺意を沸かす。



「ゼルダを退屈させてただけだろ!?しかもヨッシーまで巻き込んで……!」



あんなによく訓練されたヨッシーはじめてみたぞ、とリンクは思った。

あの乱闘は掃除当番を決めるためのもので、負けると自由時間が減ってしまうのでみんな割と本気で戦うのだ。



「ヨッシーに関してはあいつの意志だよ。いくら味方だからって姫を吹っ飛ばしたら報復はさせてもらうからね、って言っただけだもん」

「……言っただけですますな。
明らかに脅してるだろ……っ!」

「でも従ったのはヨッシーの意志だし☆ …………ん!?

ああああああっ!」



どこかを見ていきなり発狂しだした子供リンクに、リンクはぎょっとして彼の視線をたどる。

と、そこには少し傷の残っているマルスと、少ししゅんとした感じのゼルダの姿があった。



「……あのキザ王子、あれぐらいの怪我で姫に気を使わせるとはいい度胸だ…………」



子リンクは笑っていた。
普段マルスが笑うときのように、不穏な空気をかもしながら。



「じゃ、リンク、俺姫助けにいってくるから」



ゼルダのもとへ駆け寄る子リンク。


リンクは、どこはかとなくマルスに似てきたような子供リンクに頭を抱えるしかできなかったとさ。






守りたいものがある


「あら、子リンク」
「お子様は帰りなよ、ゼルダは僕と雑談中」
「姫、暇だったなら俺に声かけてくれればよかったのにー」

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あきゅろす。
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