短編小説
4
「冴、腕は……」
「押すといてぇ。こりゃ青たんになってやがるな、重傷だ」
「怪我したとこを押すな!」
「いや、青たんとかモロに軽傷じゃないっすか……」
とりあえず折れてなくてよかった……。
キッチリとツッコミを入れる中居さんを後目に俺はホッと息をついた。
ちなみに中居さんももうなんともないように平然と運転している。
お二人ともかなり頑丈なようで。
喜ばしいことだ。
「……で、これはどこに向かってるんだ?」
朝は冴に会いに行くつもりだったけど、今冴は俺の横にいる。
俺の問いに冴と仲居さんは顔を見合わせた。
「……赴任先?」
ポツリと答えた冴に、プッと仲居さんが吹き出した。
「……え?なにここ」
この車は俺も普段よく使う駅の周辺を走っていたはずだ。
なのに同じところをグルグル回ったかと思ったら、いつの間にか見ず知らずの場所へたどり着いていた。
「すごいよね、隠れてるわけじゃないのに何故か見つからない場所なんだ。超自然ステルス?」
こんな場所があったのか……
駅周辺のはずなのに何もない寂れた広い空き地。
そのそばに怪しげな雰囲気のバー。
……昨日といい冴はバーテンダーにでもなったのだろうか。
「とりあえず入ろうか」
本当に誰も来ないのだろう。
適当に車を止めて仲居さんが言った。
「てか開いてるんですか?」
「一応鍵も持ってるし」
そんな会話をよそに扉は抵抗なく開いた。
ただ店内には人はいない。
「ここは表向きはバーだけどね、実質的に俺たちのアジトなんだ。さ、奥に……」
……アジトってなに。
そう思ったけどとりあえず黙って促されるまま奥の部屋に入る。
シンプル、無機質な事務室といった感じの部屋だ。
ドカッとソファーに腰かけた冴。
俺もその隣に座った。
「冴さん湿布」
仲居さんが湿布を冴に手渡す。そして冴はそれを俺に回した。
湿布くらい自分で貼れるだろと呆れはしたが何も言わず冴の袖を捲る。
冴のわがままは今に始まったことじゃない。
「っ冴、これ本当に大丈夫なのかよ……」
車では軽口を叩いていたが、どうも洒落にならなさそうなほど腫れている。
青たんっていうかどす紫だ。
「大丈夫だよ、腫れって見た目グロいけど案外スッと治るから」
「こんなんでビビってんじゃねえよ」
仲居さんが慣れたような様子で言い、心配する俺を冴が鼻で笑う。
……二人とも怪我に慣れすぎだろ。
「……ちゃんと病院行けよ」
言いながら湿布を張る。
冴の顔色を伺ってみたが、確かに大したことなさそうな顔をしていた。
ひとまず安心。
冴は心配かけさせまいと痛みを隠すような配慮なんてしないからな、間違いなく!
「……で、冴。俺は聞きたいことが山ほどあるんだけど」
一段落したところで俺はソファーに寄りかかりながら言った。
「覚悟は出来てんな」
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