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短編小説
恋のしかたを教えよう

今は6月、ジメジメ感もそれなりに薄れ、過ごしやすい日が続いている。
今年めでたく高校に入学し、再び一年目のスクールライフを送っているわけだけれど……


「さとちん、飴おくれー」

「もってねーし」

「は!?ありえーん……ゆっちは!?」


正直、あんまり楽しくない。


「じゃーん☆」

「ピンキー……」

「なんか久しぶりに見た!」


まったく予想通りの反応ありがとうございます。

飴を強請る友人に内心冷めた目を向けながら、俺は頭に残っていたフレーズをふざけて口ずさむ。


「ピンキーちょうだいピンキーちょうだい♪」

「これまた懐かしい歌だな」

「ゆっちーなんでちょうだい言いながらあげてるのさ」

「ほら、俺ってあまのじゃくだから」


ちょっとふざけていれば友達はできた。
他のクラスのやつともなんだかんだ仲良くなれたし、自分の居場所は確保されている。

毎日くだらない雑談とうまく理解できない授業の繰り返し。
定期的にあるテストの成績は恐らく中の下のまま変わることはないだろう。

家に帰ったらバイトか寝るか、暇をつぶすか。
遊びにいく面子も何となく決まっている。
それもいいけれど場所がパターンすぎてもうお腹いっぱいだ。

みんなが一番楽しむであろう恋愛なんて、俺には到底出来そうにない。
なんでもかんでも現実的に見てしまう俺に、誰かをひた想うなんて健気な感情は当然持ち合わせていなかった。

高校に行く価値が見いだせない。
けど、やめる度胸がないからなんとなく通い続ける。
そして卒業した後は、野垂れ死なないようにどこかでなんとなく働き続けるのだろう。
妻子、趣味、ともになく、なんとなく生きていく毎日。
……なんてつまらない人生だ。

生きる意味すら見いだせないけど、例によって例のごとく死ぬ度胸もない。


愛想のいい仮面を付けて、当たり障りのない日々を過ごす。
無意味で無価値な毎日がこれからもずっと続いていく…………


と、思ってたんだけど。




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あきゅろす。
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