テニプリBL小説 1 「ああ、なんてかわいらしいお子だろう」 「うわーーーかわいーー!こんなにちっちゃいんだにゃーーー!」 「こら英二」 「構いませんよ。その様に言っていただけて、私も誇りに思いますわ」 小さな赤ん坊を抱いたたおやかな女性が笑った。 「ごめんなさい!遅れましたですーーー!」 「ようこそいらした。山吹村の檀太一殿で相違ないか?」 「はいです!ちょっとごたごたしてて……本当にすみませんです……!」 「気になさるな、こうして祝福にきてくれただけで、涙が出そうなほど嬉しいのだ。 では始めるとしよう、王子の誕生の宴だ!!」 王が宣言すると、その場にいた者がみな歓声を上げた。 「各国から、祝福を授けてくださる魔法使いの方々がいらしています。皆様、王子をどうか、お願いいたします」 「では、僕から。……王子、あなたの父君や母君のように、賢く育ってください」 母に抱かれた王子に向かい言うと、不二は一振り腕を動かした。 言葉がきらめきとなって王子のもとへ降り注ぐ。 「じゃあ次は俺!王妃様、赤ちゃん抱っこしてもいい?」 「ええ、どうぞ」 微笑みながら王妃が王子を受け渡した。 「ありがと!王子、明るく笑顔に育ってちょんまげ!」 王子を抱き、舞うようにしてあやす菊丸。降り注ぐ煌めきに鮮やかな色がともる。 「そんじゃ、次裕太!」 「えっ、あっっはい!」 ほいっ、と渡される王子の体をあわあわと抱くのは先の不二の弟である裕太だ。 「いいか、王子様。優しく素直な人になるんだぞ!」 よしよし、とあやしながら言う裕太。 「じゃあ次は檀に……」 「ははははははいです!!!」 裕太に声をかけられると、檀は王子に向かってバッと両手を向けた。 「健康に、丈夫に育ってくださいですー!」 「えっと、じゃあ次は……」 「じゃあ僕ね!王子様抱っこさせて!」 嬉々として裕太に駆け寄る葵。 「この魔法が成功したら……王子はきっと絶世の美少年ーーー!」 降り注ぐ光のまばゆさが、王子の美貌を約束した。 「あと残ってる人はー……」 「俺だな!」 向日が王子へ腕を伸ばした。 「もっと高くとんでみそ!!」 「なんの魔法なのそれーーー!?」 高い高いをしながら向日が言った。 ぎょっとした葵や周りの人々に胸を張って答える。 「だから、運動神経だよ!これで王子様も護衛なんていらないくらい強くなるぜ!」 「ありがとうございます、向日さん」 王妃はホッとしたように微笑んだ。 六人の贈り物の象徴であるきらめきは、最高潮に達していた。 その煌めきは、やがて魔法使いと王と王妃を包むように光のベールとなる。 城にきていた者達からはもう光しか見えないだろう。 「では、最後に、この柳蓮二が……」 「ちょお待ちんしゃい」 最後の贈り物はその国の魔法使いが、というのが習わしである。 柳が進み出たところで、それを引き止める声がかかった。 「こんに可愛い坊を産んで、俺には内緒にしてたんけ」 「うわっ」 「仁王……!」 光のベールの中にいた、望まれない来賓。 向日から赤ん坊を奪い取った仁王に柳が目を見開いた。 「何をする気だ、仁王!」 「やめて、王子を放して!」 「何をするって……決まっとるじゃろ? 誕生祝いの贈り物じゃ。 15歳の誕生日、俺の口づけをもって、王子は永遠に俺のものになるじゃろう」 王子を抱いたまま、仁王がリップ音を立てる。 王子の身を包んだ紫の光は何ともいえない妖しさを含んでいた。 「お前……っ!」 「俺も一応立海の魔法使いじゃき、オオトリでも問題なか」 ニヤリと口の端を歪める仁王。 「じゃあの。また15年後、迎えにくるけ」 魔法で王子を母のもとに返すと仁王は煌めきに身を溶かした。 「そんな……王子が……あの悪名高い仁王のもとへ……?」 「いいえ」 呆然と呟く王に柳が力強く言った。 「あいつの思い通りにはさせません。次は俺が魔法をかける番です」 鋭い眼光で柳が口を開く。 「仁王の口付けを受けても婚礼はなされず、王子は百年間の眠りに落ちるだろう」 柳の言葉を受け、紫の煌めきは色をなくした。 「柳……!それでは王子がかわいそうだ……!」 「大丈夫です。婚礼の呪は成立したら解く方法は他方の死のみですが、眠りは解く方法があります。 ……しかし念のために、王子が眠ってしまったその時は、城の者も共に眠るようにしましょう」 柳の贈り物が王子に渡され、祝福の儀が終わった。 薄れていく光の向こうで、集まった国民達はとても幸福そうである。 「みなのもの!王子は無事に贈り物を受け取った! 王子の名は……精市とする! あとはひたすら、王子の誕生を祝って欲しい!」 王の言葉に城が揺れるほどの歓声が上がる。 魔法使い達も憂い顔を隠し、めだたいめでたいとはしゃいで回った。 [次へ#] [戻る] |