Andante
出だしは順調?2
キンコーンと授業の始まるチャイムがなった。
並ばずに思い思いの場所に留まるみんなに戸惑いつつも俺も慧の側で先生を伺った。
「お前たち種目は決まったか?ゲートボール、ドッチボール、テニスからだ。
ゲートボールは右、ドッチボールは真ん中、テニスは左に集まれ」
」
先生の指示にみんな手際よく移動し始めた。
俺達も左に移動し始めると、確かにテニスが一番多そうだった。
「みんな決まってんだな。じゃあ各自コートに移動だ」
先生の言葉に早々にグラウンドを立ち去るみんな。
「……体操は?」
呆然と呟く俺に慧はしれっと返した。
「競技ごとに講師も違うからな。テニスコートでやるんだ」
「……すご」
よくわからないけどさすが私立だなあ。
思わずほぼ放置プレイだった前の学校と比較してしまう。
「じゃあ名簿を書いた子から初めていいよ」
長ったらしい説明と準備運動を終えて先生が言った。
「慧、俺名前書いとくからラケット取ってきてよ」
「わかった」
効率よく事を進めなければ、もう授業時間も3分の1を過ぎたところだ。
いそいそと名前を書きなぐり慧を探すと、慧は誰かと話をしているところだった。
ニコニコと仲良さげに話していたかと思えば慧は突然ギョッとして声を上げた。
「は!?お前と試合!?」
慧と対話している彼はそんな慧を見てクスリと笑う。
「そうそう。藤堂結構スポーツできるし」
「部活のやつらのがうまいだろうが……」
「ははは、微妙だろー」
朗らかに笑う彼に周りにいた人達は気恥ずかしげに笑った。
彼らはテニス部のようだ。
「それに、転入先のお手並みを、な」
彼はちらりと俺をみて言った。
慧も俺が来たことに気づきラケットを渡してくる。
ノリ気でない様子の慧に俺はこっそり耳打ちした。
「なんかあるの?やりたくない理由」
「あいつ、テニス部のレギュラー」
「問題ないない!やろうよ」
「ほら、こう言ってんだし」
ますますやる気を燃やす俺に慧もがっくりと頷いた。
それを後目に彼が俺に近寄ってくる。
「俺、テニス部の森って言うんだ。よろしくな」
「うん、よろしく」
にかっと笑う森君。
彼は体格もがっしりしているし手強そうだ。
「じゃー早速始めっか。藤堂コート入れー」
「わーってるよ」
ものすごくめんどくさそうな慧。
あくまでもノリ気でない慧に俺はツカツカと詰め寄った。
「慧、真っ剣に!」
やるからには勝ちたい。
相手がレギュラーだろうと素人なりに足元を掬ってやる!
「わかったって……」
「サーブそっちからでいいぞー」
それでも投げやりに頭を掻いた慧。
コートの反対から森君が叫ぶと、慧はボール籠に手を伸ばした。
「……錬、始めるぞ」
慧が放ったサーブは、俺が予想していた以上に力が籠もっていた。
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