Andante
おやすみ2
この日はとても幸せな夢を見た気がする。
圭悟の部屋の中で、俺は圭悟の隣に座っていた。
くだらない雑談や、他の人には言えない悩み事、相手にあまりうまく伝えられない自分の中の考え。
お互いがお互いの話に耳を傾け、笑って騒いで忙しそうだ。
圭悟はいつだって本音で話すから俺の心には生傷が耐えない。
しかも面白がってその傷を抉ってきたりするからなおのこと質が悪い。
そんな外道と今まで一緒にやってこれたのは、あいつがいつもいじけた俺に優しい言葉をくれるから。
慈しむように、優しい瞳で俺を見ていてくれるから。
圭悟が傍にいる。
その時間は、俺にとっては最も大切な時間だった。
…………大切な、時間だったはずなのに。
俺がその手を手放した。
「あ…………」
目が覚めると俺は泣いていた。
今はまだ、それでもいいけれど。
痛くて切ないから、せめて、お前は俺を想って泣いてくれるなよ。
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