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Andante
三日目4

「時計空になったけどどうする?」

「う〜ん……委員長に聞いてきてくれ」


小声でそう話し合い、俺は飲み物のおかわりを口実に一旦席を立った。



「あの、委員長……」


片膝をつき、こっそりと委員長を呼ぶ。


「錬君。どうしましたか」

「時雨達の砂時計が空になったんだけど、普通に掃けちゃっていいの?」

「そうですね、もう見世物パンダの役割は果たしてくれましたから……」

「この上なく失礼!?」


生徒会役員達も一応はお客さんだということが念頭にあるのだろうか。
絶句しつつ立ち上がると、委員長はハッとした顔で立ち上がり俺の腕を押さえ込んだ。


「っ錬君……」

「え?な、なに……?」


なにやら深刻そうな顔に冷たい汗が垂れる。



「あなた、今日女物のパンツを穿いていますねっ!?」


委員長が配慮のない大声でそんなことを言った。


「なっ……なに言ってやがる馬鹿野郎ーッ!!」


俺が最後まで隠し通そうとしていた秘密をーっ!
顔から火が出るとはまさにこのことであった。
辺りがざわめきヒソヒソと何かささやきあう気配がする。
大方あいつ女物のパンツだってよーみたいなこと話してるんじゃないだろうか、しんどい。

俺だって出来ることなら履きたくなかった。

けれど普段の下着じゃスカートからちら見えするとばっちり指摘されてしまったのだ。
これを履けば自然とかわいくなれると思うよなんていう藤咲君の後押しもあり、俺はまあ誰に見られるでもないしと思って履いていたのだ。
それがまさかこんな大々的にバラされるなんて嘘だろ……。


「なにをそんなに怒るんです、穿いたのは自分の意思でしょう。
存分に走りなさい、屈みなさい。
しっかりと目に焼き付けますよ」


どうしてくれるんだとガクガク胸倉を揺さぶっても、委員長は反省の色なんて見せることなく息づかい荒くする始末だった。
そんなことしてるうちにも周りの好奇の視線が俺に集まっていく。

ああ駄目だ、俺は今この場でとんでもない変態に仕立て上げられてしまった。
もう……耐えきれない……!!


「っうわあああああッ!!」


今すぐ誰もいない静かな場所へ逃げてしまいたい!
俺は衝動のまま、渾身の速度でその場から姿を消した。


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