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Andante
三日目2

「町娘の作ったおにぎりはいかがですか?」


委員長がガシャリガシャリと行列に尋ねて回る。
おにぎりの入ったバスケットを持ってついて行きながら、一体お前は誰なんだと心の中でつっこみを入れた。
おにぎりを売らせる武将ってなんだよ。
せめて村人っぽい格好にしろよ。


「くださーい」

「俺も2つ」



そしてこれが意外と売れる。
やっぱただ待ってるだけじゃ手持ち無沙汰だよな。
次々と委員長の元に集まる金券に思わず商売強さを感じた。
委員長のあとにくっついて、食券と引き換えにおにぎりを渡していく。


「あ、委員ちょ」

「お父様かお父上と呼びなさい」


親子だったのか……。
次々に明らかになる俺と委員長の設定にもうツッコむ気力もわかない。
俺は素直にその設定に従って委員長に話し掛ける。


「……お父様、おにぎりが切れました」

「そうですか。ならば代わりに先ほど焼いたマドレーヌを取ってきましょう。
この金券を受付に渡してきてください。君の食券も、混ぜないように渡してくださいね」


そう言うと委員長はバスケットを持って去っていく。
衣装との相性は−100%だ。

不格好な後ろ姿を見送って受付に金券を渡しに行く。
ちょうど席が空き、注文していた料理も届くという忙しい状況だった。


「錬君。丁度良かった、指名来てるんだよ」

「えっそうなの?」


金券を受け取りつつ受付係がそう言った。
急いで席に向かい、代わりに座っていた森山と交代する。
砂時計はあとちょっとだけ残っている。


「ごめんなさい遅れて。
指名してくれてありがとうございます」

「あっいや……」


お客さんが言い淀んだ。
口下手な人らしい。
見た感じだと社会人だ。誰かの父兄だろうか?


「フレンチトースト頼んだんですね。お味はどうですか?」


なんだかとてもおいしそうに見えた。
俺も頼んでみようかな。


「あのっおいしいです、とっても!」

「よかった」


うん、絶対頼もう。
楽しみでお腹減ってきたなあ。

そんなこんなで砂時計が空になる。
でもあと一口くらいだから食べ終わるまで待とう。

そう思ってお客さんを眺めるが、彼はトーストに視線を落としたまま動かない。


「お客様?」

「あっご、ごめんなさいっ」


お客さんは慌ててトーストにフォークを刺した。
名残惜しそうにそれを見ると、パクッと一口で食べきった。

食べきるのが惜しいくらい旨いなんてすごいな、この店。

本当にグランプリとか取っちゃうのかな、なんて期待を抱きつつ、俺は無事に次の指名を受けた。


「メイド男の作ったマドレーヌはいかがですか?」


席を移動中外から委員長の声が聞こえてくる。
メイド男ってことは……森山かな。
武将とメイドって、想像しただけで本当もうカオスだな。


「お待たせいたしました。
え〜と、エビとカニの……ホワイト…………スパゲッティです!」


料理名を省略してしまうのは仕方ない。
そう何品も覚えられるほど出来のいい頭を持っていないのだ。

最後に残った自分の分の皿を取り、指名された席に着く。


「ご指名ありがとうございます!」


働きづめで腹減った!
さあ俺も食べるぞ〜!


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