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Andante
一日目2

お客さんの注文を聞き、食券と金券を交換して金券にスタンプを押すのは受付の係の人。
客を捌きながらスマホを駆使して速やかに調理担当にオーダーを伝える。
俺がやるのは、席に案内し、料理を運ぶウェイターの役目。
席は限られているし、それなりの人数がいたからそう忙しくなることもないだろうと高をくくっていた。

しかしこのコスプレ喫茶にはなぜか指名制度がある。
料理、デザート、ドリンクをセットで頼むと、好きなウェイターを同席させることができるのだ。
もちろん同席の間は立ち回ることが出来なくなり、案内や料理を運ぶ人手が減る。
指名が複数人に入ってしまうとそれはもう大変なことになる。
そして残念なことにその大変な状況は頻繁に、長時間に渡って俺に襲いかかった。
俺は店内を駆けずり回りながら、指名が入らない切なさに少し傷ついていた。


「おー!さすが若い!」


お客さんが言いながら俺の足を凝視する。
親父臭いこの口振りは先生だろうかと思ったが、見た目的に高等部の先輩なのかもしれない。

俺はいたたまれなくて持っていたお盆でそっと足を隠した。

長いソックスを履いているもののミニスカートなため出るとこは出ている。
……女の子ってすごい。
いつもこんな羞恥心に耐えてるのか。


「えっと……ごゆっくりどうぞ」


曖昧に微笑むと、お客さんに頭を下げ速やかに撤退する。

……それにしても見られてるなあ。
足のせい?
確かにムキムキで格好いいだろうけど今見つめられるとさすがに照れる。
ズボンが穿きたいと切実に思った。


「錬君、あがりです。
衣装は着替えずに回って来てください、宣伝になりますからね」

「まじかー」

「あ、藤堂君はもうちょっとまってください。ちょうどあなた指名の注文が入りました」

「…………」


喫茶店には指名なんてもの、普通存在しないと思うんだけどなあ……。





「お疲れ慧!ご飯食べよ!」

「え?食ってないのか?」

「…………え?今まで働いてたじゃん」

「……客席に着いたときに色々食べたから」


ああ、そうだった……。
俺が忙しく働く中、慧は圧倒的な量の指名を受けあっちに座りこっちに座り状態だった。


「いいよなあ。俺なんてサッカー部の奴らすら指名してくれなかったんだけど。
そのくせ働いてる最中に呼び止めてくるし」

「……まあ仕方ない」


慧が俺の足元に視線を落として言った。
そしてそのままフイっと顔を背ける。
お前もそんな反応か慧。

やっぱり、露出してるからゴツゴツさが出て違和感を感じさせるのだろうか。


「森子お姉さまがうらやましい……」


同じ生足組なのに森山は結構指名されてる。


「……あいつの着てみるか?」

「……そういうんじゃない……」


人望の差なのだろうか。
俺は接客中ほとんど何も摂取できなかったことに切なさを感じた。


「当日はなんとかしたいなあ……。
ニーハイじゃなくてスパッツにすれば、まだマシになるか?」

「あー……う〜ん……」


難しい顔で唸る慧。
だめっぽいな。


「あっじゃあ藤咲君に相談しよう!」

「藤咲?そうか、あいつの専門分野だな」

「知ってたんだ」

「まあな。藤咲っていうか、藤咲んちだけど。
じゃあ探しながら飯を探すか。
何が食べたいんだ?」


うーん……特に希望はないなあ……。


「それも探そう!
こんだけ広いと探検だけでも楽しいし!」


こうして俺達はコスプレ衣装のまま人混みの中に飛び込んだのだった。

みんな派手な格好だから対して浮かなかった。驚愕!




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あきゅろす。
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