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Andante
いざ!7


ゲーム大会はそこそこ白熱した。
夢中になってやっていたせいで気付けばもう部屋が薄暗くなっている。


「そろそろ電気付けよっか」

「大分暗くなってきたな」


立ち上がった俺に続いて、慧がカーテンを覗き空の色を伺う。
ふぅ、とコントローラーを置いて時雨も席を立った。


「そろそろ帰らせてもらう」

「え、飯は」

「部屋でとる」


パッと身支度を整えると時雨は玄関へ向かった。
俺も慌ててついて行く。


「誰かと約束してるのか?」

「いや」

「じゃあ食べてけよ」

「悪いが忙しい」


時雨がきっぱりとそう言う。
急に素っ気なくなった時雨に俺は思わず口を噤んだ。
どうかしたのかと慧も後ろから様子を見に来る。


「当分はここにも来ないつもりだ」


靴を履きながら何でもないことのようにサラリと告げる時雨を俺は呆然と見つめる。
慧が俺の動揺を察し慰めるようにポンと肩をたたく。


「文化祭近いし仕方ねえよ。
会長は生徒会なんだから」

「そっか……」


時雨を怒らせたのかと焦ってしまったけど、仕事なら仕方がない。

内心不貞腐れながらも俺は時雨を見送った。


「頑張れよ」

「ああ。邪魔したな」


時雨はフッと笑ってみせると手を振る俺たちに背を向け部屋を出た。


あーあ、本当に忙しそうだ。
ひょっとして時雨は真っ直ぐ帰って仕事を終わらせたかったのか?

表情には出ていなかったけど、そう思うとそわそわしたりちらりと時計を伺っていたような気がする。


「……連れ込んだの不味かったなあ……」


ずーんと肩を落とす俺。
しょぼくれた呟きに、慧は励ますように明るい声音で言った。


「いい息抜きになったんじゃないか?
不機嫌そうでもなかったし、気にすることねぇよ」

「だといいけどなぁ」


慧の優しさに小さく笑いながら、俺は文化祭のため頑張る時雨に優しくしてやろうと決意した。



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