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Andante
再会3


ソファーの上には座ったまま、ブランケットをかけて眠る時雨がいた。


「時雨寝ちゃったんだ……」

「お前が起きる少しだけ前にな」


言うと、慧が麦茶をあおる。
俺もグラスを要求すると、慧は仕方なさそうに別のグラスに麦茶を注いだ。


「時雨は今日ここで寝かすの?」

「そこなんだよ。でも起こすのも悪いよなあ」


相当疲れてるんだろうし、と慧が眉を寄せながら言った。


「…………おい、」


悩む俺たちに、寝ていたはずの時雨が呼びかける。


「時雨、起きたんだ」

「…………藤堂、俺の荷物はどこだ……」


居眠りを認めないつもりか、時雨は俺をスルーして慧に呼びかける。
慧は言われたとおり荷物をまとめると、覚醒してるのか怪しい時雨にだいじょぶかと声をかけた。


「部屋まで送るよ。荷物は俺が持ってくから、とりあえず一旦起きてくれ」


ダルそうに目を細める時雨。
時雨は早寝早起きが習慣付いてるらしいからこの時間帯はキツいのかもしれない。

フラフラと危なっかしく立ち上がる時雨を慌てて支える。


「早めに寝かせなきゃな。
早く時雨の部屋にいこう」

「錬、お前も先に寝てていいぞ」

「いや、俺も手伝うって」

「……明日…………朝から練習だぞ」


ぼそりと呟いた時雨に、俺は思わず苦笑いする。


「俺よりお前が心配だよ。
明日は朝の自主トレ休めよ?」

「ほら錬、会長貸せ」


慧はよっ、と声を上げると時雨に腕を回し一人でその体を支えた。
時雨も自分の状態を弁えているのか抵抗しない。


「え、俺マジで留守番なの?」

「大人しく寝とけ」


きょとりと2人を見つめる俺にそう言い残し、慧は時雨を連れて部屋を出ていく。

えー俺また寝ちゃうじゃん……。


「ふぁぁあ……」


大きく欠伸をすると、俺はその場に寝っ転がりさっき自分に掛かっていた薄い布団にくるまった。

眠気はあるものの鼓動とリンクしてズキズキと痛む筋肉が俺の意識を保ち続けていた。
眠いのに寝れない辛さに俺は一人呻く。
どうしよう……。

いっそ慧に徹夜に付き合ってもらうか……。

俺はとんでもなくはた迷惑な回答を出した。
そしてその矢先、俺は慧の帰りを待つことなく眠りについたのだった。



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あきゅろす。
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