School wars
01
×3時間目×
(「食料は全部お菓子でOK?」「あたぼうよ」)
「なぁ、なぁ。昔の曲の言いあっこしよう」
奴が突然してきた提案がこれだった。
「あー。めんどくせー」
今日は遠足という名目でちょっと遠くの動物園に行く。
今はその道中で、バスに揺られている。
「ねぇ、ねぇ。いいだろー。やろうよー」
「お前は・・・。じっと黙ってることが出来ないのか?」
「無理!!」
こいつ、即答しやがった。
内心イラッとしながらもいつものことだと自分を宥める。
「ついさっきまでトランプやってたよな。俺ら。しかも野郎二人で」
周りでもトランプやウノなどそれぞれがグループを作って楽しんでいる。
俺もその中に混ざろうとした時、こいつがそれを阻んだのだ。
「お、ウノじゃん。俺も・・・」
「透。透は俺とトランプするの」
「は?お前も一緒にウノをすればいいだろ?」
「いいから。トランプ」
有無を言わせない威圧感。
こいつの我が侭はいつものことだからと諦めた。
「邪魔して悪かった。俺、こいつとトランプやってくるわ」
陽の背中を押して自分の席に戻る。
勿論隣は陽だ。
「さ、何やろうか。トランプだしてよ」
「は?おい。まさか、自分で持ってきてないのに誘ったのか?」
「うん。持ってきてるでしょ?」
「持ってきてねぇよ!!」
「はぁ。使えない奴」
「てめぇ!!歯ぁ食いしばれ」
「暴力反対。仕方ないから俺が借りてくるよ」
お?
いつもなら、ここで「待ってるから早くどこぞの奴の奪ってきてよ」とでも言うはずだ。
だが、奴はあっさりと自分で取りに行った。
陽は女子に借りたらしいトランプを片手に戻ってきた。
「よし。これで出来るね」
「ああ」
そうしてトランプをすること1時間。
バスの中ということもあり、二人で出来るゲームは少ない。
そして、負け続けていれば全くもって楽しくない。
「だー!止めだ。止めだ」
「えー。やろうよ」
「楽しくねぇし」
「俺は楽しいよ?勝つたびに透の顔が歪んでいくのを見れるから」
「・・・・・お前、本当に人の子か?」
「勿論。列記としたホモサピエンスのオスとメスの愛の結晶だよ」
「お前の言い方には愛が感じられねぇよ」
「まぁ、俺のことはいいじゃん。それより、お腹すかない?」
「ん。ああ、そうだな」
腕時計を見ればもう十二時だ。
他の生徒もちらほら弁当を出している。
「食料は全部お菓子でOK?」
「あたぼうよ」
俺らの共通点といえば大の甘い物好きと言うことくらいだ。
その証拠に、今日の昼食はなく、全てお菓子を持ってきていた。
時折互いの持ち物を交換しながらそれらについて語る。
このときの陽は年相応の自然な笑顔を見せる。
それが、たまらなく嬉しい。
「さて、食後の運動に・・・歌うたおう」
「やめろ。回りに迷惑だ」
本気で歌いそうだった陽の肩を押さえつける。
「ええー、じゃぁ・・・・・」
「マシなこと言えよ」
真剣に考えている陽を無視して窓の外を見る。
多分あと三十分もしないうちに着くだろう。
「なぁなぁ、昔の曲の言いあっこしよう」
ここで冒頭に戻る。
そして、結局俺はこいつの綱を握り続けるのは無理で、いろんな曲を耳元で歌い続けられるのだった。
微妙に音痴なのが笑えた。
そんなこんなで遠足は始まった。
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