novel
ぬくもり(西仏/甘め)
「ん…?」
まどろみから浮上すればカーテンの向こうはまだ日も昇らぬ夜明け前。フランスは妙な時間に目が覚めたもんだと頭を掻いてむくりと上半身を起こす。
ふと壁掛け時計に目を凝らしてみれば…二度寝しても良さそうだ。
「なんだまだこんな時間なの…」
どうやら昨夜はカウチソファでそのまま寝落ちしてしまったらしい。
くぁ、とひとつ欠伸をしながら伸びをする。
「…寒い」
どうやら薄着のままだったらしい。ぶるりと身震いをして自身を抱き締める。
起き上がった弾みで床に落ちた自分で用意した覚えのない毛布に視線をやると、色黒の健康そうな腕が背後からフランスに覆い被さるように伸びてきて毛布を掴んだ。
「…起きるんには早いんとちゃう?」
フランスを後ろから抱き抱えるようにして肩に顎をのせるスペインにぽす、と頭を預けてみる。どうやら毛布はこいつがかけてくれたらしい。
「…あれスペインお前帰ったんじゃなかったの」
人肌が温かい。また睡魔がやってきそうだ。体温が高めのスペインの健康そうな褐色の肌に安心感をもらう。昨日はこのフランスの家で二人で飲んでいたのだった。
「帰る前にふらんすがそのまま寝よったから一緒に寝ることにしたんや」
毛布と共にフランスをぎゅっと包んでどさ、と大きめなソファに倒れ込む。
「まだ寒いんやし、離れたら寒いやん。側にいたって…」
抱き締めた白い首筋に顔を埋めて囁く。温かいスペインのぬくもりに身体を預けたまま少しだけ首を捻り、体温を分け合うその彼の額にひとつキスを落として二人はまたまどろみの中へとろとろと落ちていった。
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