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「ハアッ…ハアッ…」



息を切らしながらさっきの場所まで戻る



電信柱の横にはさっきと変わらない場所にあの兎がいた



さっき見た時と全く同じ



兎はピクリとも動かない



私はしゃがみこんでそっと兎に触れた



ゆっくりと…壊れものを扱うように



少しは反応があるかと思ったけれど兎は全く反応しなかった



まさか…
死んでしまったんじゃ…!



恐ろしい考えが頭の中をよぎり私は急いで兎を抱きかかえた



すると私の腕を通して兎が呼吸をしているのが伝わってきた



ほっと胸を撫で下ろして私は兎を見つめた



兎の体はとても冷えていて白い毛並みも茶色く汚れていた



さらに兎は体中傷だらけだった



まるで、私みたい



何故だか
ふと、そう思った



私は兎を暖めるように胸に抱きかかえて踵を返した



よくわからないけれど涙が止まらなかった










ーーーーーーーーーーー








ドアを開けてから誰も居ない家にただいま、と言ってみた




バカみたい…



まだ家族の暖かい温もりを期待している



もう無駄だって



わかってるのに



そんなことをぼんやりと考えながらリビングを通りすぎる



私は兎をつれて奥にあるバスルームへと向かった




中にはいって小さめの盥にお湯をくみ兎を入れてやった



そっと手でお湯をすくい、兎をゆっくりと洗う



傷に染みるかな…と思ったけれど、特に反応は無かった



しばらくお湯につけて兎の体が温まったのを確認して私はバスルームをあとにした



兎をタオルで拭くと真っ白でサラサラな綺麗な毛並みが現れた



「きれい…」




兎の毛並みに見とれながらも傷の具合を確認した




「…ひどい…」



兎の体には打ち身のような傷が多々ついていた



地面に、打ちつけられたのかしら…



そう思うとさらに悲しくなって、胸が締め付けらた




その後すぐに
兎をそっと抱きしめ自分の部屋に連れて行きベッドに寝かせてやった

スゥスゥと寝息を
たてている兎



「…可愛いな…」



もしかしたら
この兎が私の家族になってくれるかもしれない


そう考えると


自然と笑みがこぼれた



笑ったのは何年ぶりだろう…



そんな事を考えながらいつの間にか
私も兎につられて深い眠りに落ちていった






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あきゅろす。
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