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【悲報】最強の勇者御一行様、死に損ないの魔王に呪いをかけられ最弱パーティにされてしまう!
第19話 勇者御一行と宿屋殺人事件 中編
「二人だけで良いのかよ? 勇者、ジョエル・ジョークハルト。全員で知恵を出し合ってもらったって良いんだぜ?」
 部屋に入るや否や、ゴロー・アケチコが俺を挑発してきた。
「こんな事件くらい、俺とギルバートの二人で充分だ。それに殺人犯がまだこの宿屋内に居るかもしれない今、不用意に動き回るよりかは一室に複数人で身を固めている方が安全だからな」

 さて、改めて状況を整理しよう。
 事件現場となるは宿屋の二階。左右対称の間取りをしている宿屋の、中央階段を上り左奥の一室だ。
 俺達が泊まる右奥の部屋とは正反対に位置する。
 そんな部屋の中央に倒れる、今回の被害者となる男性。ギャラン・プリーツ。
 その胸には包丁の様な物が突き刺さっていた。見事に心臓を一刺しと言えよう。

 そして、その相方であるミハネ・プリーツ。先程の悲鳴の声の主であり、第一発見者となる女性だ。
 それに対し、探偵のキーン・ダイチ、同じく探偵のコパン・エドリバー、更に同じく探偵のゴロー・アケチコ、更に更に探偵のシャーロット・ハームズ。
 ここに今、更に勇者改め探偵のジョエル・ジョークハルト、ギルバート・アインの二人が加わり、実に六名の探偵が一同に介した事になっている。正に前代未聞の異様な光景だ。

 ミハネも連れのギャランが殺害された事で、悲しみや不安や怒り等、様々な感情が渦巻いているだろうが、それに加え謎の探偵が六人もわらわらとやって来たとあっては、心の整理も出来まい。心中お察しする。

「ふむ……お嬢さん、参考までに聞くが、今日の下着は何色かね?」
「し、白です……けど……」
「ほぅ? 良《よ》いね」
 突然のシャーロット・ハームズの質問に、ミハネは恥ずかしそうに小声で答えた。それを受け、シャーロットは鼻の下を伸ばして微笑んだ。
 おぃオヤジィイイイ! 探偵と言う立場を悪用して何聞いてんだ。何の参考にもならねぇよ。ってかミハネも答えんでいいわ。

 一方のキーン・ダイチは、
「くっ……もう少しヒントが欲しいな。皆目見当がつかない」
 顎に手を当てながら首をかしげた。
 ヒント欲しいってなんだよ。なぞなぞじゃねーんだよ。

 コパンは一心不乱にギャランの私物となる旅行鞄を漁っている。

 それぞれにツッコミたい所は山ほどあるが、俺達もうかうかしていられない。
 指を咥えて見ているだけでは、ゴローによって俺達が殺人犯に仕立てあげられてしまう。

「まずは、情報収集ですかね」
「それしかあるまいな」
 言いながら俺はギルの言葉に頷き、
「なぁアンタ」
「な、何でしょうか……?」
「少し俺達にも話を聞かせてくれないか」
 ミハネに話を聞いてみる事にした。

「まず、二人ともプリーツって事は、あんたらは兄妹か夫婦か? とりあえず発見当時の事や、何か思い当たる節とか、何でもいいんだ。他の探偵達にも色々聞かれてるだろうし、心身ともに疲弊しちまってる所恐縮だが」
「い、いえ。他の方々は私に特に質問もせず、嬉々として物色をし始めたので……さっきのシャーロットさんの質問が初でしたから」
 え? コイツらミハネから何の話も聞かずに証拠品集めとか始めたの? 重要参考人だぞ、馬鹿じゃねぇのか?

「えっと……私と彼は夫婦です。新婚旅行をしていて、氷のお城を見たいと言う私のわがままから、ブリージアを目指していたんです。今晩は夕食後、一度分かれたんです。彼はお酒も飲んでいましたし、そのまま部屋に、私はお風呂に入ってから戻ると言うことで」
「なるほど」
 つい先程の出来事ゆえ、ミハネも記憶を遡るのに苦労なく当時の状況を口にしてくれた。
「――――それで、お風呂からあがり部屋に戻ると……彼が倒れていたんです」

「何か身に覚えとかないんですか? 誰かの恨みを買うような事があったとか、何らかの事件に巻き込まれる様な前兆があったとか」
 今回は珍しくギルも推理モードだ。こうして二人で謎を解くと言うのは久しぶりで、どこか懐かしい気にすらさせられた。

「前兆と言えるかはわからないのですが……」
 言って、ミハネが自分のポーチから一枚の紙切れを取り出し手渡してきた。

「これは……?」

 紙には新聞の切り抜き文字で、

『あんたの番です』

 とだけ書かれていた。

「以前からこの様な怪文書が送り付けられていたのですか?」
「いえ、今までこんなものは一度も……私達、昨晩からこの宿屋に泊まっているのですが、届いたのは今朝で、それが初めてです」

 今朝……ねぇ?

「彼は、ただのドラマの観すぎ。感化された田○圭くんのファンがしでかした悪戯だと笑っていましたが、それがまさかこんな事になるなんて……」
「初日、昨日の晩に何かなかったのか? 誰か宿泊客とトラブルになったとか」
「そんな事はなかったです」
 ピシャリとミハネは言い切った。しかし、ミハネが嘘を吐いている感じはしない。
 ご遺体も別に口角が無理矢理に上げられ笑顔にされている感じもない。西○七瀬が絡んでるワケでもなさそうだ。
 となると、本当に無差別……誰でも良かった。と言うことか?
 
「とりあえず、一度二、三日前……いや、ここ五日程の宿泊客のリストを見せてもらおう。何か手がかりがあるかも知れねぇ」
 そうですね、と頷くギル。

 そんな今まさに部屋を出ようとした俺達の背中に、ゴローの声が投げ掛けられた。
「おいおい。どこに行こうってんだ、新米探偵さん達よぅ? 事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起こっているんだと高校で習わなかったか?」
 高校でそんな事習うワケねぇだろ、とツッコミたかったが、俺はその挑発の言葉を華麗にスルーし、
「新米なんでね。探偵のセオリーなんてのは俺達にはわからねぇ。わからないなら、わからないなりに自由に捜査させて貰おうと思ってね」
「せいぜい足掻くが良い。俺が絶対にお前を犯人に仕立てあげてやる」
「仕立て上げるって何!?」
 見ろ。ゴローが余計な事を言いやがるもんだから、ミハネが素っ頓狂な声を上げた。

「ふん。俺はあいつらが嫌いなんだ。だから俺がこの手でヤツらを犯人にするのさ」
「え、あなた探偵さんですよね!? 推理は何処に行ったんですか!?」
「いいかい、お嬢ちゃん。真実はいつも一つとは限らないん――――」
「バッキャロー! いつも一つに決まってんだろ!」
 ゴローの言葉を遮って、先程まで黙々と荷物を漁っていたコパンが突然怒鳴った。クソガキかと思いきや度々見た目に不相応な態度を垣間見せるし、何なんだよコイツは……


 ◇

 ギィイイイイイ! バタン――――

 ここで再び、何処からともなく現れた謎の薄暗い階段と扉のシーン。例のアイキャッチなる物が挿入された。
 しかしこれも二回目。一回目は何事かと思ったが、さすがに二回目ともなると動じる事はなくなった。俺の順応性もなかなかなモノである。

「宿泊客のリスト……ですかい? 別に構いやせんが……」
 俺達の申し出にオヤジは一瞬顔色を曇らせたが、カウンターの引き出しからバインダーに挟まれた宿泊客リストを取り出すと、俺達に手渡した。

 そいつを受け取ると、俺とギル、オヤジの三人はロビーのテーブルへと場所を移した。
 五日も遡れば充分だろうと、テーブルの上にリストを広げ、ペラペラとページを捲る。

 そこで、俺はある事に気付いてしまった。
「なんだ……これ……」
「ジョエルさん?」
 言うが早いか、俺は五日分と言わず、更に過去を遡るべく、ページを乱暴に捲る。

 そして、
「……あ、|探偵《アイツ》らずっと泊まってんのぉおおおおお!? 泊まりっぱなしじゃねぇかよ! しかも一階と二階合わせて全8部屋しかないのに4部屋が探偵だよ。そりゃすぐ満室にもならぁ!」
 そう。探偵達は過去五日どころではない。どこまで遡っても、ずっとこの宿屋の宿泊客リストにその名を連ねていたのだ。
 最早下手な実家より実家と化している。
 ずっと事件が起きるのを、ここに泊まり虎視眈々と待っていたと言うのか、アイツらは!? マジ馬鹿じゃねぇの!?

「こんな物騒な村ゆえ、普段なかなか宿泊客なんて来ないんでさぁ。だからあんな方々だろうと、俺達からすればありがたい、立派なお客様なんです。泊まってくれる動機としては不純すぎやすがね……
 事件が起きない日は皆口を揃えて退屈だ退屈だと言っているくらいで」
 言って、オヤジは顔を伏せた。
 殺人事件が起きて、それが噂になっちまったら、それこそ誰も寄り付かなくなっちまうぞ。
 早急に奴らを退去させるべきだと俺は思うのだがね。時既に遅しだが。

「まぁ、口々に退屈とは言っても自分で事件を起こそうとしないだけ、彼らも節度はある……と言うことですかね?」
「あまりにも事件が起きなさすぎた時は、俺に誰か宿泊客を殺してくれないかと相談を持ちかけられた事もあります。息子達が必死に説得してくれて、俺も人殺しにならずに済みましたが……」
 その時の事を思い出したのか、オヤジは大きな溜め息を吐いた。
 なるほど。お客様とは言え、オヤジはオヤジで奴らに手を焼いている様だ。

「話が逸れたな」
 と軌道修正し、俺は改めて五日前のページを開く。
 リストと間取りを照らし合わせよう。まず、一階ロビーの中央階段を隔て、両脇に横並びで2部屋ずつの計4部屋。そして二階も一階と同様に、中央階段を隔て左右に2部屋ずつ。二階で計4部屋。宿屋全体で8部屋となる。
 一階の部屋を左から見て1〜4。二階の部屋を左から5〜8としよう。つまり、俺達が泊まる部屋は7と8。現場が5だ。

 一応、一階の全ての部屋は、部屋を出れば直ぐにロビーとなるが、二階は8の部屋の前に布団等を運ぶ際の業務用の小さなエレベーターが設置されている。対照となる5の部屋の前には清掃用具等をしまう倉庫的な部屋が一つ。

 それらを踏まえた上で、このリストを見てみよう。
 そこに書かれていた名前は、最早見慣れたキーン、コパン、ゴロー、シャーロットの四人の探偵と、見覚えのない四人の名前。
 オヤジの話によると、探偵はそれぞれ皆一階で1部屋ずつ使っており、先程の部屋番号を当てはめると、キーンが1、コパンが2、シャーロットが3、ゴローが4に住み着いている。
 ちなみに例の探偵以外の四人はそれぞれ5〜8に一泊だけして宿屋を出たそうで、この四人の内二人はまた別の探偵との事。どうなってんだよ探偵が飽和状態だよ。

 そして、四日前。
 変わらず四人の探偵と、ここで知った人間の名が一つ。アマンダ・ビークの名前が登場した。
 アマンダと言えば元ハンターで、先程ローブをかぶった状態の不審者そのものの俺達に『見かけない顔』と言って話しかけてきた社交的なおばさんだ。現在6の部屋に泊まっており、この宿屋には明後日までいると言っていた記憶がある。
 と言うことは、探偵達程では無いにせよ、一週間もの長期宿泊と言うことだ。
 オヤジ曰く、この日のそれ以外の宿泊客は一泊のみで、翌朝には発ったとの事。

 三日前と一昨日は代わり映えしないメンツ。探偵四人、アマンダに加え、一泊のみの宿泊客のみだ。
 客が来ないと言いつつ、何だかんだ毎晩満室にはなっているんじゃないか。と俺は感心した。

 さて、問題の一日前。昨日だ。
 宿泊客は探偵四人にアマンダ、あと、一泊のみの宿泊客が二人と、そこにプリーツ夫妻が加わり部屋は満室。
 プリーツ夫妻のチェックインは午前中と、結構早く宿屋に来たようだ。

「見知らぬ客は二人だけ。後は代わり映えしないメンツですね?」
 と、リストを覗き込みながらギル。
「他の客とトラブルはなかったと言っていたな……」
 ムムム、と俺は顎に手を当て唸った。


 ――――その瞬間、

「謎は全て解けた!」
 なんて言う大声と共に、キーン・ダイチが階段を駆け下りてきた。
 なんだと!? 犯人がわかったのか!?

「間違いない……犯人はあの人だッ!」
 キーンに続き、コパンも階段を駆け下りて来るのかと思いきや、コパンはどこからともなく取り出したスケボーに乗り、階段を最上段から高らかに舞った。
 おいガキぃいいいいいッ! 屋内でスケボーやるんじゃねぇええええ!

 コケることなくロビーに着地したコパンは両手を広げ、
「オヤジさん! 全員をこのロビーに集めてくれ!」
「え、えぇ……本当に犯人がわかったんですかぃ?」
 溜め息混じりに呟くようにそう言った。
 ミハネ以上に精神が疲弊している様だな。



「え、もう謎解けたの?」
 ロビーに降りてくるや、アネモネは俺とギルを見上げながら問うて来た。
「わからん。俺達がここで宿泊客リストを見ていたら、突然謎が解けたとか言って降りてきたんだ」
「はぇー。さすが探偵だねぇ」
 なんて、アネモネは感心しているが、本当に解けたのかよ?
 アイツらミハネから話も聞かず、ずっと物色してただけだぞ?

「ニアさんの様子は?」
 と、再びロビーに集結した別室組に、ギルが心配そうに問う。
「熱は相変わらずだけど、とりあえず呼吸は落ち着いたよ。また一人にしちゃうのも心配だから、とっとと犯人が誰か――――」

 セリフの途中。何かに気付いたエイオスが、
「オヤジさん! 後ろ! 後ろぉおおッ!」
 突然声を大にして叫んだ。
「え?」
 間抜けな声を上げながらオヤジが後ろを振り向くと、
「――――ちっ!!」
 いつの間にか背後に立っていたコパンが電光石火の勢いで後ろに何かを隠した。

「おぃいいいいいッ! てめぇ今何をしようとしていやがった!」
 俺は立ち尽くすコパンに指を突き付け叫んだ。
 コパンは一瞬くっ……と奥歯を噛み締めると、
「あれれ〜? おっかしぃなぁ?」
 急にキャラを変えてすっとぼけ始めた。
「いやいや、おかしいのはキミだよ? なんで急にキャラ変えた? 何してたのよ、オヤジさんの後ろで。その後ろに隠したの何か見せてみ? 良い子だから」
「ちっ……わぁったよ」
 言い逃れは出来まいと観念したのか、コパンはエイオスの言葉に素直に応じ、後ろ手に隠していたそいつを差し出した。

「これは……注射器?」
 受け取った俺達はコパンが持っていたソレを訝しげな顔で見つめる。
「中身は麻酔だよ、諸君」
 と、コパンではなく、代わりにシャーロットがタバコをふかしながら言った。
「麻酔?」
 なんで麻酔なんか持ち歩いてんだ? しかもあまつさえソレをオヤジさんに射そうとしたのか? 何故。

「|コパン《そいつ》はいつも、誰かを麻酔で寝かせ、相手の声色を真似て推理を披露するんだ。あたかもコパンではなく、その人本人の推理の様に見せかけて、な」
 と、お次はゴロー。
 寝かせた上、声色を真似て? なんでまたそんな真似を?

 ゴローに続き、オブジェとなる大きな彫像に寄りかかるように立ちながらキーンは、
「さしずめ、推理が外れた時の免罪符と言った所だろう。自分の口で得意気に推理を語り、それが全く見当外れな推理だった場合、コパンは筆舌に尽くしがたい恥をかくことになる。が、こうやって誰かの口を借りて誰かの推理とすれば、外れても自分はさほど恥ずかしくないからね」
「え、何それ? ちゃんと自分の推理は自分の推理として自分の口から伝えようよ? 自信持って。ね、コパンくん?」
 たった一つの(恥ずかしい)真実晒す、その名も迷探偵コパンは、エイオスのツッコミがとどめとなったのか、顔を真っ赤にして立ち尽くす。
 ってか、探偵ども皆知ってたのかよ。なら止めろや。

 しかし、そこで俺は一つの不信点に気が付いた。
 キーンの寄り掛かる彫像は歪な形をしているが、伸びた細い箇所に折れた痕……修繕の跡が見えたのだ。全く関係ない事かも知れないが、とりあえず違和感と言うことで記憶の片隅に置いておく事にする。

「コイツらの言う通りさ……だがアンタ、良く俺の隠密行動に気付いたね? さては、アンタも暗殺者かい?」
「ん? あぁ、そうだよ? コパンくんも探偵だけど暗殺者な感じ?」
「あぁ。俺には絶対に捕まえなくちゃならないヤツがいるんだ。そいつと対峙した時のために暗殺術を学んだのさ」
「まさか……その絶対に捕まえなくちゃならない相手って……」
「察したか、暗殺者。そう、黒づくめの――――」
「とりあえず犯人がわかったんだろ? さっさと誰が犯人なのか言ってくれねぇか? もう文字数がやばいんだ」
 と、俺はエイオスとコパンの暗殺者談義をぶった切り、話の進行を促した。
 悪いが俺には暗殺術の何たるかもわからないし、興味はない。暗殺者同士、今度オフの日にでもゆっくりやってくれ。

 俺の言葉に頷くと、シャーロットはタバコの煙を吐きながら、
「そうだね。それでは、僭越ながら|探偵《わたし》達の推理を言わせて頂こう」
 平静を装っている様だが、シャーロットは年甲斐もなく妙にソワソワして見える。早く言いたくて言いたくて仕方がない感じだ。

 キーン、コパン、ゴローの目に力が宿る。
 同時に、ミハネ、アマンダ、オヤジ、ベルモットは固唾を飲み込んだ。俺達勇者御一行も同様だ。

 シャーロットの口から飛び出すのは、一体誰の名前なのか――――

「犯人は……アマンダさん。あなたです」
「わ、私ぃ!?」
 シャーロットに指を突き付けられたアマンダは、然るべきリアクションをして見せた。
「させるかぁあああッ!」
「!?」
 しかし、ここでキーンがシャーロットの推理を遮った。
 邪魔されたシャーロットがキーンを睨み付ける。

「俺もシャーロットさんと同じだ! アマンダさん、犯人はあなただ!」
 シャーロットと同様にキーンがアマンダに指を突き付ける。

「な――――」
「待て待て! 今度は俺だ! 犯人はベルモットさん、あなただ!」
 更にコパンが声高らかにベルモットを指さした。
「ぼ、僕ですかッ!?」

「待て! 俺にも言わせろ!」
 今度はゴローがカットインしてきた。嫌な予感がしてならない。
「犯人はお前だ! 勇者、ジョエル・ジョークハルト!」
 言って、ゴローは俺に指を突き付けた。やっぱりだチクショー!
「た、探偵ぃいいいいい……ッ!」

 しかし、
「ジョエルさん、大丈夫です」
 と、酷く冷静な声のトーンで、ギルが耳打ちし、
「これは中編、まだ後編が残っています。推理物では邪道と言われていますが、メタ視点で行けば、残りの尺的に現段階で疑われる人は犯人でないパターンが大半。真犯人は後半で判明するはずです」
 ……え、そう言うもんなの?

 アマンダはたじろぎ、ベルモットは参ったとこめかみを掻いている。俺はギリリと奥歯を噛みながらゴローを睨み付けた。
 探偵達も自分の導き出した犯人との対峙で勝ち誇った様な顔をしている。それが実に腹立たしい。

 正に、一触即発の雰囲気が漂っていた。一体真犯人は誰なのか!?


【勇者御一行と宿屋殺人事件 後編】に続く!



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