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雪月花
15
『………』
葉月は何も答えない。
「ナギは強い。刺客として私の前に現れたのなら、覚悟は決まっているハズ。
そう簡単に信念も揺るがないでしょう。
そうなれば、90%以上の確率でパンドラの発動を成功させると思うの。
何処までパンドラの被害が及ぶかはわからないけど、ナギの真の狙いは私である事は間違いない。
さすがのナギも私以外の人間を巻き込む事はないと思うけど、万一に備えて戦う時は出来るだけ広い場所で戦うようにするから」
『いや、既にれいんくん以外の人間巻き込まれてるけど。
忍くん刺されてるんだけど』
「遅かれ早かれこうなる事は判ってた。大丈夫、皆に迷惑はかけないから」
『だから既に忍くんに…
いや、いいや。何でもない』

葉月、折れる。

こうなったれいんを止める事が出来ないのは、長年の付き合い故に判ってしまうのだ。
そして、恐らく間もなくれいんの前に現れるであろう刺客・凪を止められない事も同様で。

『…とりあえず、一度病院に来てくれないか。
忍くんもそろそろ目を覚ましても良い頃だし、出来れば君ともゆっくり話をしたい』
「行くのは構わないけど、今更話し?
相手が誰であろうと、私は返り討ちにしてみせるわよ」
『…とにかく来てくれ。
一応友真くんは既に帰したから、直にそっちに着くはずだし。
それと…』
「それと?」
『友真くんにも言ったんだが、この事は薫くんには内緒にして欲しいんだ。
あの子は忍くんが帰って来て、少しずつだが回復傾向にあるんだ。
今は余計な心配をかけたくない』

葉月にそう言われ、れいんは言葉に詰まった。
これは葉月に言うべきか言わないべきか。

いざ、れいんは決断した。
「ハヅキ」
『何だい?』
と、受話器の向こうからは優しげな声がする。
恐らくそれは、れいんが今回の刺客との戦いを考え直すとか、その類いの言葉を期待してのモノだろう。

しかし、れいんの口から出た言葉は――――


「カオル…電話の途中で起きてきて、ずっと私の横で話聞いてたの」

『ち…えぇッ!?』


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あきゅろす。
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